えいがうるふ

さかなのこのえいがうるふのネタバレレビュー・内容・結末

さかなのこ(2022年製作の映画)
2.6

このレビューはネタバレを含みます

偏りのある人間の最大の強みかつ弱みでもある「好き」を貫ける才能。同調圧力のきつい日本の教育現場では、ミー坊の母のように我が子の特性をまるっと認め見守りそのままに伸ばしてやれる親はそうそういまい。だからこそ、そうした親の揺るぎないスタンスをベースに周囲の人間に恵まれて幸いにも本人の社会的成功につながった奇跡的好例として、特に身に覚えのある親子はこの作品にとても励まされるかもしれない。

ただ、個人的には沖田監督に期待しすぎた感が否めない。現実世界でも変人やキャラに偏りのある人物が大好物の私はもちろんさかなクンさんも大好きで、釣り好きの息子が幼い頃には一緒に講演会等にも行ったぐらいだが、だからこそか「ああ、こんなふうに安易なファンタジーにして見せちゃうんだ・・」という肩透かしをなんども食らった。

子どもたちが観ることを想定してなのだろうが、徹頭徹尾ふわふわしてんなぁという印象。どこまでもやさしい世界観なのは分かるが、あまりにも全編ゆるふわ過ぎて、エンターテイメントとしてはかなり冗長でものすごく時間が長く感じた(というか実際長い。長すぎる!)かと思えば終盤の展開は端折り過ぎでいきなり成功しててびっくり、延々と続くゆるふわに退屈して知らずに途中で寝落ちしたのかと思ったほど。
あと、家族で囲む食卓すら弟の意向が絶対で影の薄い兄や父親像など一歩間違えたら家族の闇が見えてしまいそうな面はさらっと流されたまま終わったのも何とも背中がスースーした。まして途中から父親の姿は全く見えなくなり母子家庭になったのかと思いきや、メンテナンスに恐ろしく費用がかかるはずの水槽が自宅にずらりと並んでいたりして、よほど母親の実家が太いのだろうかなどと余計なことを考えてしまった。ああ、大人って嫌ねー。

そもそも実在の主役本人が深く制作に関わっているので立ち入れない部分もあったのだろうが、家族や家庭環境に関することにしろ、彼が才能を持つテレビタレントとして成功するまでに必ず飲まされたであろう芸能界の濁った水にしろ、さかなクン本人にとって思い出したくないことや触れたくないことはこの際まるっと分厚いふんわり雲の彼方へ押しやっている印象が否めなかった。もちろん幼い子どもが見る分にはそれでもいいのだろうが、自分は残念ながら子供心をほぼ失ったいい大人なので、イリュージョン演出装置のアラが見えてしまい残念だった。

のんのキャスティングは大正解だと思う。彼女の持ち味が最大限活かされていた。
でも、それならそれを信じて冒頭の言い訳がましい字幕文はナシにして欲しかったし、女優としての彼女の可愛さにフォーカスした「お絵描きに夢中になって鼻のアタマに絵の具ついちゃってる」みたいなあざとい演出はやめて欲しかった(ウエェーやめろぉぉーー!と思わず声が出た)