えいがうるふ

第9地区のえいがうるふのネタバレレビュー・内容・結末

第9地区(2009年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

評価の分かれる作品故になんとなく後回しにしていたが、しょうもない駄作と糾弾されつつも一部の人間には妙に刺さる理由が分かった気がする。面白かった。

冒頭から明白な主人公ヴィカスのポンコツぶりにやはりこれは噂通りの駄作・・?と思いきや、ある意味どこまでもダメな主人公が超常設定における人外生物との接触により皮肉にも内面が人として進歩するという異色のボンクラ成長譚として観ればかなり面白かった。

舞台がヨハネスブルグという時点で人種差別がモチーフになっている作品であろうことは予想がついたが、確かにそれをエイリアンと人間に置き換えることでレイシズムの理不尽さや残酷さが遠慮なく露骨に描き出されていたと思う。
ただ、監督自身がこれは政治的な作品ではないと明言している通り、社会風刺や啓蒙的な意図よりもあくまでもエンターテイメントとして設定を拝借した悪ノリ感の方が突出していたので、賛否両論あるのは仕方ないだろう。それでも、結局根源的な差別問題は何も解決せず終わるラストには、敢えて語られないリアリティを感じた。

個人的には、くだらないとか頭悪そうと罵倒されようがやりたいことをやってやる!と製作陣が開き直って好きな画を作ってる感が伝わってくる作品は嫌いではない。
ブレブレで下等なんだか高等なんだか分からんエイリアンたちの知性レベルなど、設定の詰めの甘さにツッコミを入れ出したらキリがないが、その割にバカバカしいだけでなく冒頭で想像した以上にちゃんと練られた脚本で退屈しなかった。超展開からの共闘、からの文字通り時空を超える友情爆誕だとか、なんだかんだ胸熱シーン入れてくるのも憎い。そこらへんはもう「ヌルヌルのベッタベタがガガガ!!ってきてガシャン!したらドカーンなんだよ!!!!!」・・てな感じで擬音だけで状況を説明したがる低学年男子になったつもりで楽しむのが正しいのだろう。
ところで施設を抜け出したヴィカスがようやく連絡がついた妻に真っ先に伝えた弁解の言葉が「俺はあんなのとはヤってない」だったのには苦笑。もはやそう言う問題じゃないだろーがw

それにしてもポンコツにハイテク兵器は基地外に刃物と同等もしくはそれ以上に危険である。即逃げるべし。