Kto

RRRのKtoのレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
4.0
【ひとこと説明】
1920年 英国統治時代のインドを舞台に、二人の男の友情と葛藤と戦いを描いている。
インド映画らしい圧倒的な快活さ、ストーリーの明快さ、テンポの良さで常時エンジンフル回転している様なパワフルな映画だった。

映画全体のトーンがコミカルさと真面目さの境界にあり、表現主義的なアクションシーンの連続が、段々深い快感に変わっていく。

【感想】
●骨太な、高いエンターテイメント性
ストーリー、人物の心情、敵味方構造が非常にシンプルであり、観客を惑わせない。解釈の余地を全く与えない。漫画で言うと「これは見開き2ページを全て使いたい絵だろうな〜」というハイライトが1分に1度くらいの頻度で出てくる。冒頭からエンディングまで全くドライブ感を落とさないので、3時間の長さは全く感じない。

最近の映画ではもはや主流となっている「単なる勧善懲悪を回避する話」に対して、揺り戻し的に「複雑な文脈を大胆に削ぎ落としてでも観るものを鼓舞する様なストレートな話」が求められているのかもしれないと感じた。
英国人のカリカチュアライズも、リアリズムを廃してRRRというジェットコースターに乗るためなら目を瞑ろう。

●ブロマンス
ラーマとビームが、それぞれの正義のために共闘する話のため、特に前半は二人の友情の形成過程が強調されるが、その中でブロマンス(Bromance = 男性同士の近しい関係のこと。性的な関わりはないものの、ホモソーシャルな親密さの一種とされる)を想起させる親密さも描かれている。同性愛としての解釈も出ているらしいが、そこまでの確からしさはない。

いずれにせよ、元々は出自も行動動機も全く異なる二人の男が、命をかけて共闘する姿が主軸であり、単なる戦友以上の結びつきがある。

●イングロリアス・バスターズ
RRRは、英国人に「銃弾を使うのが勿体ない」と言わしめるほど、命を軽んじられてきたインド人の復讐劇でもある。監督自身も公言している通り(wikipedia参照)、イングロリアス・バスターズの影響も感じた。映画という虚構の中で、かつて虐げられてきた人々に救済的作品を作ってきたタランティーノの息遣い。
Kto

Kto