ひこくろ

ヘルドッグスのひこくろのレビュー・感想・評価

ヘルドッグス(2022年製作の映画)
4.4
強烈なキャラクターたちが織り成す、熱いヤクザ映画だった。
出てくる人物は誰もがひと癖もふた癖もあるような人ばかり。
ただでさえキャラクターとして立っているのに、役者が演技でその魅力を倍増させている。
特に、どこかネジが飛んでるサイコパス室岡を演じた坂口健太郎がハマり役だった。
笑顔で人を殺していく様子が本当に心から楽しそうで、それでいながら闇も感じさせて、素直に唸らされた。

主演の岡田准一の役もいい。
暗い過去を抱え、躊躇いなく人を殺すようになった兼高という役は、この人の魅力とぴったり合っていたと思う。
そんな岡田准一と坂口健太郎の愛情にも似た感情を抱えたバディぶりが、たまらなく気持ちいい。

ほかの出演者たちもみんな役をこれでもかというぐらいに「生きて」いて、とても熱い。

また、脚本のまとめ方もとても上手い。
話はヤクザ組織の内部抗争が中心で、潜入捜査で組織を壊そうとする警察の狙いが絡んでくる。
登場人物は多いし、組織のあれこれもとても複雑だ。駆け引きなんかもあちこちで起こる。
が、強烈なキャラを生かし、それらをすっきりと見せることに成功している。
わずか二時間強に、これだけの話を盛り込み、しかも、きっちりとわかりやすく、きれいにまとめたのは、原田眞人の本領発揮というところだろう。

岡田准一が担当しているアクションシーンも素晴らしい。
早口でまくしたてたり、ぼそぼそと語ったりする、聞き取られることを無視したような演出も、強烈なキャラクターにリアリティを生み出す要素としてちゃんと機能している。
美術も音楽も、衣裳も、舞台も、どれもがいい。
とにかく、作品の邪魔になるような要素が何ひとつとしてない。
とても完成度が高く、それだけにグッと惹きこまれる、最高に楽しい映画だった。
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