BATI

VORTEX ヴォルテックスのBATIのレビュー・感想・評価

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)
4.2
今そこにいるパートナーが「ここ」にはいないその無常さ。人というものが消えて存在がなくなっていくこと、存在しないことによってその存在が際立ち、求めてしまう哀切さ。それすらも無常。この世から消えることに温度や感情は存在しない。

高齢夫婦の最期の時。かなりゆったりとした作りで、ドキュメントかと思うように淡々続いていく分序盤はうとうとしてしまったが、画面を二分割していることが示す認知症による分断が終盤にしたがってどんどん効いてくる。過去のノエ作品のような露悪性は鳴りを潜めているが、やっていることは「エンター・ザ・ヴォイド」と一緒で、ハイパーなヴィジュアルがない、なおかつゆっくりとその時、そしてその後を映していくので真綿で首を絞められる感覚に陥る。

もうプロットに書かれてるから書くけど、二分割画面が最大に活きるのがパートナーが亡くなってから。私死んだことないですけど、死ぬ感覚をとてもリアルに描いてるんですよね。極め付けはラストで、「この世からいなくなることとは」をこんなに静粛かつ冷徹に映していて、背筋が凍ったよ...。

ダリオ・アルジェント演技上手いな...っていうかもう演技でもないのかもしれない。アンソニー・ホプキンスが「ファーザー」で凄まじい演技見せたけど、あれも半分以上は自分自身だったのではと思えてくる。フランソワーズ・ルブランの正気なのかどうか分からない普通との境界のなさを見せるのも見事。息子役のアレックス・ルッツも凄く上手いな。っていうかノエは基本的に下手な人は使わないんですよね。
BATI

BATI