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インフィニティ・プールのBATIのレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
4.0
前作「ポゼッサー」と同じく徹底的な肉体破壊と複製されるごとに希薄になっていく自己の不確かさ。ただ、「私はオリジナルなのか、コピーなのか」は主なテーマではなく、複製=転生または蘇生のように描かれる。コピーされるごとに自由意志、自立意思を揺さぶられていくジェームズ。前作の方が映画としてのルックは好みだけど、自分の人生を見失っているパトロン付きの売れない作家がナラティブを見つけていくという話としてはより深いところにいったのではないだろうか。問題はナラティブが見つかるのかということだが...。

レプリカントのように美しいマスクのアレクサンダー・スカルスガルドがコピーされていく物語にキャスティングされるのもナイス。あらゆる体液を放出させられるのは生命を吸われるメタファーであり、その肉体が幾度も傷つけられ破壊されていくのもなんかお父様の「ビデオドローム」みたいだな。被支配下に置かれることで自分の人生や自意識が甘ったれたものであることを思い知らされていくと同時に、他者を犠牲にしてのうのうと生きていないか。その卑しさを自分に向けることは出来るのかという現代批判でもあるのではないかな。歪んだマスクはその象徴でもあろう。

出てくる人間ほぼ正しくないけど、ミア・ゴスがとびきり邪悪でイキイキしてた。ジョイントをキメてのVR乱交はギャスパー・ノエみたいで良かった。若干懐かしい表現に見えたけど。ジャンルムービーに見えて、哲学的な映画しか作らない監督なんだよね、ブランドン。映画の歪さ、ルックそのものよりそういう思想がお父様から一番影響されていると思う。
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