ルイまる子

生れてはみたけれどのルイまる子のレビュー・感想・評価

生れてはみたけれど(1932年製作の映画)
4.0
小津安二郎のファン。年に何度かは美術館に訪れる気持ちで家にあるDVDで細かいところまで目を凝らし視聴。拘りは美術にしても俳優にしても徹底しているが、男性像が独特で、小津先生の美意識は特に男性に見られる。女性は芯が強く知性的、また男性の描き方に比べそれほど外見は美しくない(原節子は多分視聴者受け用にキャスティングしただけで、小津先生の理想は派手でなく控えめな人なんだろうと解釈)、か若しくは男性のダンディズムを際立たせたいから女性は平凡を選んでいるのでは?とも解釈出来る。本作はギンレイホールで視聴。ギンレイホールが渋いピアノを常設することになり(なんと画期的な!!!嬉しいです!今後も無声映画を見に行きたい!)無声映画のピアノ演奏で本作品を上映。全くピアノがそこにある事すら忘れてしまうほどに無声映画とピアノの音が一体化しており、いや、ピアノの音は生だから音楽としてもライブ感ありなのだが見事に一体化し素晴らしかった。昭和初期の東京。腕白坊主たちの日常と一日中針仕事をしているお母さんと厳格で偉いお父さん(このお父さんが所謂佐田啓二のお顔で。。。途中ファニーに変貌しますが、無声映画だから尚更表情にインパクトあり)。他愛もないが多くのメッセージとユーモアを含んだ映画でした。「ドラえもん」が所謂こういう腕白坊主たちの日常を2017年の現代でも延々描いているし、「サザエさん」の日常もこの昭和初期のまま、乾物屋の御用聞きと子供たちの会話なんかも未だ延々描いているし(現代ではそういうのはないでしょう。。)時代背景全く違うのに皆さん違和感なく受け入れてるのは、所謂それが日本の家族の永遠の理想像だからかな。などとフッと思ったりしました。こんな古い無声映画をわざわざ劇場に行って見るほど暇じゃないわ!って人が多いかもしれませんが、刺激的なハリウッド大作より見る価値ありかも。
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