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サバカン SABAKANのKentaCのレビュー・感想・評価

サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)
4.2
1986年の長崎の小さな町を舞台に、小学5年生の久田が、家が貧しい同級生の竹本とともにイルカを見るための冒険に出る一夏の物語。

これはもう、凄まじいエモさ…!
『スタンド・バイ・ミー』的な少年2人の旅路とその先の物語は、昭和末期のノスタルジックな雰囲気に満ち満ちていて、2人の関係性のゆっくりとした変化と共にとても心温まり沁みるものとなっていました。

人生初めての冒険、見知らぬ土地へと踏み出すドキドキ感、クラスメートから友達へと変わる瞬間のむず痒さ、年上のお姉さんへの憧れの感情、家族という存在の温かさ…その全てが優しく丁寧に描写されながら、
そこから更にドラマティックに展開し現代に収束する物語はもう感動不可避、心揺さぶられまくりで素晴らしかったです。

特に、まったく別種の2つの「旅立ち」という要所に際して描かれる、竹原ピストルさん演じるガサツで人間味溢れる父親の存在とその言動が、物語をグッと締め、引き立ててくれていて堪りませんでした。
現代社会では失われつつある、理想の父親像のひとつの形だなと。

脚本・監督の金沢知樹氏はNetflixドラマ『サンクチュアリ -聖域-』でも脚本を担当されていて、あちらも心震える面白さでしたが、どちらも熱さとエモーショナルさを兼ね備えた作品でありながらアプローチがまったく異なり、その作家性の幅広さに驚かされました。今後、世に送り出す作品にも期待が高まりまくりです。
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