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ゴジラ-1.0のKentaCのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.2
1945 年終戦直後の東京に突如ゴジラが襲来し日本を絶望の淵に叩き落す中、戦時中に特攻隊の使命を果たすことなく帰還した敷島らが立ち上がる物語。

人間ドラマの秀逸さ…これは傑作…!
戦時下で負った深い心の傷とどう向き合い生きていくかということを、真正面から丁寧に真撃に扱った作品で、期待以上かつ想像以上に素晴らしかったです。
戦争や天災の象徴および災厄が具現化した存在である「ゴジラ」との戦いを通して「トラウマを乗り越える」ことの意味を視覚的に表現していて、物語として非常にエモーショナルで心揺さぶられました。
それは主人公・敷島を演じた神木隆之介さんの演技あってのもので、特にとあるシーンでの怒りと絶望を表現した慟哭はもう流石の演技力としか言えません。

ゴジラの持つ圧倒的力、碳壊性の描き方、その造形などビジュアル的説得力も申し分なく、こんなのどうやって倒すんだ…という絶望感がまた凄まじく。
それが、戦後の日本の「さあこれから」という希望に覆いかぶさりマイナスのベクトルに容赦なく引きずり込んでくる・・という、まさに「-1.0」というタイトルを体
現する見事な怪獸映画でした。

また、帰還兵の心の傷を描いている点では『アメリカン・スナイパー』とも重なる部分を端々に感じました。
戦争が人に与える影響、落とす影の深刻さ、戦争が終わったとしても帰還者の中では何も終わっていないという心の現実とその重みについても考えさせられますね。
戦争がより身近なものとして存在する米国でこの映画が大ヒットを記録しているのもわかる気がします。
観る人によっては、過去に負った心の傷のケアに、そしてこれからを生きる希望にもなり得る、そんな力を秘めた作品だと感じました。

まだ観ておらず迷っている方は、是非とも劇場で。
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