ルイまる子

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのルイまる子のレビュー・感想・評価

4.5
ハチャメチャで視覚的に楽しい、超ぶっ飛んだ映画です。中国系アメリカ移民家族が経営する倒産寸前のコインランドリーから始まるが、奥さんエブリンが一人であれこれ抱え過ぎ、発狂寸前という忙しい、、というか混乱状態でストレスフルな毎日だ。夫はお気楽であまり仕事もせず、痴呆の父親、ゲイで反抗期の娘などが居る。ある日国税庁に呼び出される。そこでこれまた個性際立ったオールドミスの(古い言葉になりましたが、それですらない、三段腹の監査人)、ジェイミー・リー・カーティス演じるおかっぱ老女の机の上も書類の山で、彼女もエブリンと同様、ストレスまみれが溢れ出ている。表彰されるほど(そのトロフィーが何個も置いてあるが、なんかいやらしい形してるあたりから、その後このトロフィーでなんかありそうな予感がした笑)同時進行で用務室の中にワープする。別の宇宙から来た夫になりすましたカンフーの達人に、君だけがこの世を助ける救世主だとか言われ、何がなんだかわかんない内に彼女も一緒にカンフーマスターみたいなすんごい技で敵?を倒したり。わけわからん。筋を追うのはほぼ不可能だが、何故か、後半になると自然と涙が出て止まらなくなる。
【少しネタバレあり】
私が大好きだったのは、おかっぱの白人監査官のおばさんとエブリンが二人でソーセージの様なふにゃふにゃした指長人間になってて、その指をひらひら合わせる下手コミュニケーションの場面だ!これはお腹抱えて笑った!「不器用すぎる」という意味だろう。しかし、足でピアノを上手に弾くのだ。不器用だったら身体の別の部位を使えば良いという。生きるの下手なシスターズだ。 あるある笑
でも、私たちみたいな「キラワレモノ女」がこの世界の歴史を変えてきたのよ!
大爆笑!正に正に!そのとおりだ!ブラボー!

もう一つ笑ったのは、エブリンが、過去に色々やってみたが、結局続かない、その結果50代歳下層生活から抜け出せない結論だが、what if?もし、あの時、このダメ夫のプロポーズを蹴って、一人中国の奥地でカンフー修行し、その後ハリウッドでカンフー女優になれていたら?や、彼女があの時この道を選んでいたら?のwhat if?シリーズも最高に楽しかった!頭にラスカルを乗っけたシェフとかなんなん?爆 なんの脈略もなく色んなもの詰め込んでいるけど筋らしいものは一応ある笑 それを考えたところでどうするの?という話だが。

先日見たパク・チャヌク『別れる決心』の様な、あれこれを考えた先にまだ何かがあって、果てしない人間の深みに到達するという類の名画ではなさそうだ。その場で大笑いして以上という感じの作品です。でも国、人種、性別、世代全てを遥かに越えた所に構築した、スケールのデカい作品。よくこんな映画作れたよね〜 ダニエル・クワン監督はADHDらしいけど、相当日頃からやることなすことやばい人なんでしょうね。やっぱ天才はまだまだ居るんですね!

そして俳優達は、皆一度自分のキャリア頭打ちして、蘇った人たちが演じてるところがなんとも感慨深く、美しかった。古い知識のトリビアですが、ジェイミー・リー・カーティスのお母さんはあの『サイコ』のジャネット・リー。お父さんはあのトミー・カーティス。マリリンモンローの『お熱いのがお好き』でジャック・レモンと演じてた二人組最高でしたよね!この映画最高に面白いから未見の人は是非!大スターの娘として生まれ、その大スターのご両親でさえ、ノミネートされただけで、最優秀助演、主演は獲ってない。受賞した時喜びを噛み締めてそう言ってました。

子役のベトナム系の『グーニーズ』の男の子が、こんな風に成長していたんだね!アカデミー賞でハリソン・フォードと喜びあってた姿は流石に泣いてしまいました。
ルイまる子

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