たく

すずめの戸締まりのたくのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.0
すごく良かった!新海誠らしい青春ボーイミーツガールの話に震災の話を絶妙に絡めるところとか、日本の民間伝承を題材にしてるのが「君の名は。」「天気の子」に共通する感じで、新海誠のエンタメ路線としては過去作で一番バランスが取れてるように思った。震災による家族の突然の死にどう向き合うかという日本ならではのテーマもあって、終盤はほんと涙無くしては観られなかった。

冒頭の幼い鈴芽が母親を探してる場面で早くもあの話だという嫌な予感をさせておいて、そこから現在に場面を移してイケメンの草太との出会いからのすったもんだで冒頭場面を一度忘れさせる作りが上手い。鈴芽のうっかりを元にした草太との再会から日本を東へ東へと縦断するロードムービーになる展開が楽しい一方で、次第にあの土地に近づいて行くのがだんだん怖くなってくる。

東京の場面が一つ目のクライマックスになってて、関東大震災を繰り返すかっていう恐怖の展開に冷や汗が出た。終盤でめちゃくちゃ泣けるシーンがあり、絵日記でついにそのページがめくられる場面とか、鈴芽とある人物との対面で冒頭シーンが回収されるところは涙腺崩壊した。

演出面では、震災の原因をその土地に燻るエネルギー体として具象化する描き方がすごく良かったね。猫のダイジンを「まどか☆マギカ」のキュゥべえみたく露悪的に描くのも上手かったんだけど、後半キャラ変わり過ぎじゃね?ってなった。車中でかかる数々の懐メロがそれをかけた本人以外の誰にも響いてないのも絶妙に可笑しかった。ドアの鍵を開けたり締めたり、自転車の鍵を外したりする手元を何度も出すのも戸締まりを象徴してて印象的。あと声優陣が皆良くて、新人の原菜乃華を始めとして豪華俳優たちがプロの声優じゃないのに不自然さを一切感じさせないのがさすがだった。

モヤモヤポイントもいくつかあって、何より鈴芽が命を懸けてまで良く知りもしない草太を助けようとするのが、いくら好きとは言えちょっとすんなり入ってこなかった。要石の存在も今ひとつ飲み込めなくて、日本に2体しかない要石が時代と共に場所を変えるっていう説明があり、誰がその場所を決めて刺し直すのかが引っ掛かった。最初に鈴芽が要石を引っこ抜いたことが全ての原因になってて、その要石を元に戻す描写が無いのもモヤモヤした。鈴芽が持って帰って自分で刺したのかな?
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