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すずめの戸締まりのりのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

何かひとつが刺さった訳ではない。最後にかけてずっと涙を堪えていた。草太さんが要石から元に戻って良かったねの気持ちなのか、地震で大切な人を失った人々に思いを馳せた同情なのか、あの時代の大きな悲しみを思い出してなのか、それとももっと個人的な心の奥深くにあるトラウマに、この映画が触れたからなのか。辛い時に喉が詰まる感覚に近い。

1.草太さんに死ぬのは怖くないかと聞かれる→死ぬのは怖くない
2.草太のおじいさんから死ぬのが怖くないのかと聞かれる→草太さんがいない世界は怖い
3.要石になった草太に語りかけるシーン→死ぬのは怖いよ 

喉の奥に詰まった何かをずっと抱えて生きてきたすずめが草太と出会って、大切な存在ができたことで大切な存在を失う恐怖が生まれたんだな。母親を突然失った悲しみがきっとあの黒く塗り潰された日記帳のように心の中に存在していて、きっとそれが形を変えて高校2年生という多感な時期に日常生活の色んなところでの軋みに発展していて、たまきさんとの問題もそのひとつなんじゃないかと、同じように心に黒い塊を持ち未だに手放せない私は共感してしまった。だけどすずめはこの一連の出来事を通して、それを浄化することができたのかもしれないと、最後に小さな自分に語りかけるシーンで思った。誰かのことを大切に思って、光の中を生きれるー
自分に言われているようで、そんなメッセージは明るすぎると感じたけれど、だけど泣きそうだった。
この物語は偶然ではなく、あの日学校へ行くのを辞めて廃墟に向かい要石を引き抜いた、すずめ自身が始めたものだ。戦って最後には戸締まりという形で自分の手で決着を着ける、少年漫画のようなヒーローストーリーだった。

ミミズ=地震、意思を持たないもの、大臣という神はきまぐれ、生きるのも死ぬのも運、だけどそれでも少しでも長く生きていたい
色々と現実離れした展開を素直に受け入れることができるのは神道の考えがわたしに根付いているから?
自然は神、あらゆる天災は神が引き起こすもの、それは過去科学がなかった時代に信じられていたもの、でも今現代でも自然災害や事故、病気、あらゆる理不尽が起こるなかで自分の手には負えなくなったとき神様お願いしますと祈る。
扉をくぐるという行為、草太の呪文、猫という仮の姿をした神、ミミズが弾けたら雨になり大地になる、色んなところにその精神を感じざるを得なかった。
・大臣がすずめに懐いたのは餌をあげる=お供えものをしたから
・嫌いと言ったら痩せ細る、ありがとうと言ったら元に戻る=信心を忘れなければ神は応えてくれる
・扉を開けたのは大臣だったと思ったら扉が開いた場所に導いてくれていた=縁切りを願ったら危険な方法で達成されるなどやり方が強引な時がある

君の名は。の口噛み酒や天気の子の鳥居といいなかなかスピリチュアル。だからRADの壮大な世界観の曲とよく合うんだろうな。
最後西に向かって下る再会の旅エンドロールも良過ぎた。

地方と都会の描写がどちらも本当に綺麗で、ストーリーも相まってそれぞれの魅力が最大限に出ているところも好きポイント!良〜〜!
り