Mariko

ミュンヘン:戦火燃ゆる前にのMarikoのレビュー・感想・評価

4.0
ミュンヘン会談を中心にWWII開戦前の、戦争の兆しに対する姿勢が描かれた地味な良作。こういうの好き。史実がベースではあるけれど、主人公二人は架空の人物。

オックスフォードで共に学んだふたり、パウルとヒューが主人公で、ヒュー役はジョージ・マカイ、パウル役は初めて見たヤニス・ニーヴーナー。大学卒業後、それぞれ英独で外交官となったふたりのコントラストが実にいい。ヤニス・ニーヴーナー、今後要チェック。

そして、もうひとりの主人公であるようにも思われたのが、チェンバレン首相。チャーチルが出てくる映画は数多あれど、チェンバレンがこんなにクローズアップされた映画は初めて観たのだけど(そもそも戦中・戦後が描かれた作品は多いけど、戦争前夜が描かれたものは案外珍しい)今となっては「世紀の大失策の政治家」として知られるチェンバレン首相の、この宥和政策も無理からぬことではあったのかもしれない、とまで思わされてしまうジェレミー・アイアンズの名演(もちろん良き演出あって、だけれど)よ!

現実はその後どうなったのかを知っていても、いや知っているからこそ、あと一歩というところまでヒトラーを追い詰めるポールの奮闘と、彼の決意に報いようとするヒューの尽力にはグッとくるものがあったし、史実とフィクションの絡め方が秀逸なので、結末がわからないよりもスリリングだったのも凄い。
Mariko

Mariko