竜どん

マザーズの竜どんのレビュー・感想・評価

マザーズ(2016年製作の映画)
3.1
アリ・アッバシ監督は前作(製作は本作が先)『ボーダー』でもそうだったが、「懐妊」に対してかなりの(歪んだ)思い入れがある様だ。本来幸福の象徴たる赤子を胎内に巣食う「怪物」の如く忌避し始めるエレナと自らの血筋を手に入れる為に徐々に冷淡な本性をむき出しにしていくルイス。湖畔の静謐な美しさとは裏腹に暗鬱な不穏感がこれ以上ない位に立ち込めていく。しかしながら邪悪な存在という雰囲気は漂うものの結局シェリーの正体は分からず終い、ホラー映画的クライマックスも殆ど描かれないのでモヤモヤが残る。「生理学的な親」と「生みの親」の境界線を曖昧にする難題を孕んだ代理出産というシステムを通して、母親という未知の存在になることへの恐怖と葛藤を描くことが監督の意図するトコロだったのでは?と勘繰るのは考え過ぎか。

未体験ゾーンの映画たち2022三本目。

追記
実は『マーシー・ブラック』をネット購入しようとして間違ってポチってしまった本作。想像してたよりまぁまぁ面白かったので良かったデス。
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