水原秀策

TAR/ターの水原秀策のレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.0
面白かった。難解、みたいな評があったけど、別に難解でもなんでもない。昔からある「ピカレスクロマン」だよね、これ。「感情移入」絶対主義の人には受けないだろうけど。

セリフで説明せずに描写し、しかもその描写が重層的なのが素晴らしい。
例えば冒頭の「パワハラ授業」の場面。パワハラには間違いないんだけど、ただし主人公が言ってる内容は間違いとは言い切れない。むしろ芸術家視点で見たら主人公の方が正論かもしれない、そういう描き方がほんとにうまい。

ちなみに論議を呼んでるラストはまさに「ピカレスクロマン」の文法を踏まえた終わり方だ。
主人公が暴れ回って死ぬか(スカーフェイス)か、負けてねえぞとガッツを示して終わる(キッズリターン)のどっちかしかないのでね。
この映画の場合は合わせ技。
主人公はあんな境遇に陥っても真摯に音楽に向き合い、出番前には緊張し、そしてニッコリ笑って式台に立つ。最高にカッコいいじゃないか。
水原秀策

水原秀策