シネラー

TAR/ターのシネラーのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.0
ケイト・ブランシェット主演、
の本作を劇場鑑賞。
重たい内容なのは想像できていたが、
想像以上に不可解で説明を省いた内容に
面白いのかも面白くないのかも
初見では分からない映画だった。

世界最高峰のオーケストラである
ベルリン・フィルで、
初の女性主席指揮者に任命された
リディア・ターの栄枯盛衰を描く
内容となっていたが、
ターの没落していく様を
ドキュメンタリーのように自然と
描き抜いた作品だった。
映画にありがちな説明台詞が
殆んど無い中、
ケイト・ブランシェットの
転落していく女性指揮者ターの演技が
一層その作風の自然さを生み出している
かのようだった。
ターの音楽に対する考え方を語る場面が
対談や講義を通して描かれるが、
そのあたりの会話劇は興味深くもあった。
ターがレズビアン故の
ジェンダー要素も印象強く、
主観と客観のバランスが上手く
描かれている事で、
複雑な人間模様が描けていると思った。

しかしながら、
約160分に及ぶ長尺な上での
説明のない作風は、
個人的に全編通して集中する事は
出来なかった。
その上で登場人物達も多く、
場面の切り替わりが端的で
唐突なものも多い為、
登場人物をはじめとした情報を
頭で整理するだけで大変だった。
物語として進んでいるのかも分からず、
個人的に面白味よりも冗長という
印象の方が勝ってしまった。
中盤あたりから、
ターの周辺で起こっていく
不可解な現象に関しても説明どころか
明確な答えも示されず、
単なる意味の無い事象なのか
ターの心情描写なのかも分からない
数々の描写は大いに消化不良だった。
又、演奏場面を主軸にした映画ではなく、
あくまでターを描いたドキュメントである為、
多少なり演奏場面を期待していた
身としては残念さもあった。

ケイト・ブランシェットじゃないと
本編を最後まで観れる自信もなく、
少なくとも劇場をリピートする
根気も無いのだが、
配信等でリリースされる位の時には
再鑑賞しても良いと思った。
確実に2回目以降の鑑賞で整理できて
全容を理解できる映画だった。
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