TAR / ター
同じ言葉を2度繰り返すタイトル命名が流行っているようだが…
さて、本作の内容についてだが、これも最近流行りのチャンコ鍋映画になっていたよ。
テーマが極めて希薄であり、物語の主軸もブレ過ぎており、何よりも酷かったのは、主人公が転落してゆく原因が犯罪行為によってであった、という点だよ。
TARでなくとも、否、女性マエストロでなくとも、陰謀により人を陥れれば人生は転落してゆくよ。
あまりにも当たり前のことを本作のメインストーリーとして語られてゆくので、観ている側としては非常な退屈さを強いられるよ。
レズビアンとしてのゴシップや、主人公の卑怯極まり無い人間性についてなどを延々と2時間38分も見せられては耐え難いよ。
女性マエストロとしての苦悩と転落に集中して欲しかったな。
オーケストラのことや指揮者としての人生のこと、マエストロとしてこだわり抜いた譜面のことなどは、ほぼオマケとして扱われていたため、結果的には、主人公の職業が何であっても成り立つ陳腐な物語になってしまっていたことが、私は非常に残念だよ。
その残念な中において最も非難すべきことは、言わずもがな、ケイト・ブランシェットにTAR役を演じさせておきながら、脚本がこの体たらくでは話にならんではないかね。
ワンカットでの長尺シーンで彼女が極めて長い台詞を続ける場面が数箇所あったが、彼女の努力も虚しく、ストーリーが陳腐で稚拙という非常に残念な状況から脱することは、ついぞ出来なかったよ。
主演女優の凄まじい演技力を除くと、中身はほぼ空っぽな映画だったことは、本作を楽しみにしていた私としては、心底残念だよ。
オーケストラの演奏シーンもほぼ無く、ケイト・ブランシェットが指揮棒を振るう場面すら、ほぼ無かった。
と、私はこの映画のクオリティの低さを罵っているが、制作総指揮をケイト・ブランシェット自身が担っているという現実が、私をより一層落胆させているよ。
どうか俳優業に専念されたし。
無念である。
以上。