The Wretched
何故か、映画の内容とは全く無関係な邦題が付けられているが、本作には魔女は登場せず、ホラー映画でさえないよ。
普通に未知の生物が人間を襲うSFだが、ある1つの設定のみに頼ったストーリーだったよ。
その未知の生物は、人間の記憶から特定の人物の記憶だけを消去することができる。
この能力により、おそらく生物たちの食糧源としての『生きた人間』を、密かに捕食し続けることが可能となっている。
ただし、これはあくまで映画の『設定』であって、設定をストーリーそのものにしてしまった本作の作り手たちは、致命的な失敗を犯してしまったように私は感じたよ。
とは言え、主人公である長男くんの演技がお見事だったよ。
父親や近所の人たちの記憶から消えてゆく弟の存在を独りで訴え続け、父親が精神病院へ入院させようとまでしてもなお、折れずに弟がいるという自分の記憶を最後まで貫き、ついに弟を見つけ出した時「お兄ちゃん、よくがんばった!」と私は心で呟いたよ。
本作は、お兄ちゃんの立派な兄貴ぶりに心を温かくする映画だったよ。
エンドロール直前にはセオリー通りに身近な人へ寄生して終わったが、まあ、アレはホラー映画の礼儀作法のようなものであろうから、切り捨てて考えれば良かろうと思うよ。
なお、ジャケット写真および邦題は、本作の内容とは全く無関係である、という点に注意されたし。