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女賭場荒しのblacknessfallのレビュー・感想・評価

女賭場荒し(1967年製作の映画)
2.9
江波杏子って"悲愁物語"に出てくるエキセントリックで不気味なおばさんの印象しかなかったんだけど、この映画だと凛として美しい女性だったんで、まずその美貌に驚いた。

悲愁物語より10数年前の1967年の作品だから若いのは当たり前なんだけど、この当時でここまで日本人離れした彫りの深さとシャープな輪郭の顔した女性ってかなり稀なんじゃないかと思った。
作りがダイナミックなんだよ。少しアンジョリーナ・ジョリーにも似た、強さのある顔。

この江波杏子の強い感じがこの役にマッチしてた。ヤクザ相手にも怯まず己の信念を貫く性格って設定。

日本一と言われた伝説的な壺振り師を父に持つ江波杏子は、有線放送曲のOL(当時としてはかなりモダンな設定だと思う)だったんだけど、父がある賭場のイカサマを暴いたことでヤクザに報復され死ぬ。
これを機に父の意志を継ぎ日本一の壺振り師を目指し、各地の賭場を回りイカサマを暴いて回ると決意する。

それから彼女の壺振り(サイコロ振り)修行が始まる。
教えるのは父の死のきっかけになった賭場の壺振り師 (成田三樹夫)。
成田三樹夫さんもまた日本人離れしたクールな雰囲気の彫りの深い顔でこの2人のバランスが取ってもいい、ベタな言い方だが画になる笑

で、この壺振り修行がおもしろくて、成田さんが色々なイカサマの手口を丁寧に説明してくれる。「ガリ」という中に針が仕込んであるサイコロを巧みに操ることで針でサイコロを傾け狙った目を出す、とか教則ビデオ並の親切さでやってくれるから、知的好奇心を刺激された笑

だいぶ想像してた感じと違うなと思った。
江波杏子もだけど成田三樹夫さんも所謂"渡世人"みたいな雰囲気が希薄なんで。ルックスだけじゃなくてセリフ回しも上品なんだよね。
「なんじゃあぁ、われぇ!」みたいな東映ヤクザ映画的な粗野なセリフがほとんど出てこない。
これは大映映画のカラーなのかな?東映や日活や松竹は何となく作風がイメージできるんだけど、大映は何もイメージないんだけど笑

それでこの何とも不思議な雰囲気で最後まで行くのかと思ってたんだけど、話が進むに連れて昔ながらの任侠・人情・浪花節な展開になっていく。
派遣された街の落ちぶれた組に肩入れしてみたり、成田三樹夫をとの叶わぬ恋に、生き別れた姉との劇的な再会、とにかく、いつ高倉健や鶴田浩二出てきてもおかしくない旧態依然のノリになって終わっちゃうんだよな、、笑
これはとっても残念だったな。

この時代、あともうちょいで"仁義なき戦い"が公開されてヤクザ映画に革命が起きるんだけど、これはその過渡期を象徴してるようにも思えた。
飽きられてるから新機軸を狙いながらも結局、昔の型から抜け切れない中途半端さが。

それと街の有力ヤクザに江波杏子が犯されそうになるシーンあるんだけど、これも本当に慎ましいんだよ、演出が笑 着物の裾が捲れて脚が見えるぐらいで、これも大映の社風なのかな?
東映だったら絶対おっぱい出てたよ!

おっぱい見たかったとかそーゆーことじゃなく社風の違いってことで印象に残っただけで、、いや、でも、本当は…
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