シャチ状球体

フォトコピーのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

フォトコピー(2021年製作の映画)
4.1
一気飲み、家父長制、男尊女卑……日本とどちらが酷いか分からないくらいに抑圧的なインドネシアの生活環境を鮮明に描く。

奨学金頼みの生活をしているのにそれが打ち切られために学校へ通えなくなる、(酷い人達だけど便宜上)家族に家から追い出される、周囲の人たちから二次加害を受ける……。凄惨たる状況に追い込まれてもなお真実を追求しようとするスリアニの姿に心を打たれるが、これは誰にでもできることじゃない。
パーティ当日の証拠を集めながら一体自分に何が起きたのかを探っていく過程はスリリングだし、全てを無かったことにされて逆に男性側が被害者にされるという絶望的に歪な社会構造を見せた直後に被害者側が反撃をする展開になっていく脚本が巧み。

後半の展開は流れる音楽も含めてギャグかと思ったけど、一周回って恐ろしい……とはギリギリ言えないかも。ここだけ明らかに空気が違うのは統一性が失われてしまうようで残念。
あと、ラストシーンはちょっと強引。傍観者だった人たちがある朝一様に意識を変えるのは不自然で、ここはそれぞれが自分たちが加害に加担していたことを気付くような伏線をいくつか張っておいた方が良かった。

劇中にも出てくるけど、女性の性被害の問題で、被害者側にも落ち度があったのでは、という言説を垂れ流す人間はおしなべて女性に対する性加害を許容している加害者である。大前提として、(基本的に)”男性は気を付けなくてもいいのに、女性だけが自己防衛をしなければならない"という不平等が蔓延している現状認識が欠損していなければそんな考えには至らないと思うし、二次加害を誘発する要因となり得る。
ちなみに、劇中の隠蔽される性暴力に関しては、未だに脅迫・暴行要件がなお残っている日本の刑法も同じ穴の狢……。
シャチ状球体

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