みーゆー

ケイコ 目を澄ませてのみーゆーのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.0
目を凝らす


しっかり相手を見つめて読み取らないと何言ってるかも分からない状態、あまりにも理不尽に「女だから」「愛想がないから」で人の悪意をぶつけられてしまう状態にこのスクリーンを「見つめているだけの」わたしの方が苛立ちを持ち始めていた。

いやでも実際に相手が耳が聞こえないということを知るのって暮らして、ちゃんと接して、じゃないと分からんもんだよなぁ…とは思ってしまった。レジの店員もそうだし、階段でぶつかる人もそうだ、たった一瞬ではなかなか気付けない。気付いてない、無知は罪なんだけどね。誰であろうと優しい世界、これがいちばん良いんだろうけど。なかなか。

「痛いのは嫌です」「殴るのは気持ちいい」
聞こえることが大前提で生きてる私には気持ちは全て測りきれない。この少し日常を切り取ったくらいじゃまだまだ、きっとあの日記にはもっと様々な理不尽な世界が描かれていたんだろうか。ストレス発散いいじゃんね、ぶちかましてやろうよ、殺す気じゃないとやられる。相手に失礼だからな。

途中手話のみで話して字幕が一切ないシーンが印象的だった。ケイコも毎日こうやってしっかりと「目を澄まして」読み取ろうと必死なんだろうか。ジェスチャーでこんな話かな?としか読み取れない自分が少し情けなく感じた。コミュニケーションって言葉で伝えることがいちばんだと思ってたけど、気持ちを伝えるのに言語以外もあるとつくづく思い知らされる。

エンドロール、最高だった。鳥肌がすごい。
ケイコとあのボクシングジムがあの街に本当に生きているような気がした。これはあの人たちの少しばかりの日常だったのか。