あまのうずめ

ケイコ 目を澄ませてのあまのうずめのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
3.7
東京荒川区にある一番古いボクシング・ジムで小河恵子は練習を重ねる。恵子は荒川区生まれ、感音性難聴のため両耳とも聞こえておらず、ホテルの清掃をしながら弟と暮らしている。試合で勝ち相手は病院送りとなるも、恵子は淡々としていた。ジムの会長は以前病気をしており検査を受ける。


▶︎16ミリで撮られ音楽を排除していたのが、聞こえない世界と廃れた荒川の景色を体感させられた。パンチや足元の音が響き鏡を効果的に演出し、コロナ禍の閉塞感も映し出している。

起伏の無いストーリーで、'20年12月から'21年の練習や試合と仕事といった恵子の日常を同じテンションで綴ったからこそ、恵子の雄叫びが一層響き、マイナスな出来事ばかりでも希望の持てたラストにパンチを食らった。

言葉より雄弁に表情で語った岸井ゆきのの2022年の日本アカデミー賞主演女優賞受賞は、日本アカデミー賞において唯一と言っていい位正当な受賞だったと思う。会長役の三浦友和も存在感を示し脇を固め、地味だが記憶に残る佳作と言える作品。