あまね

きさらぎ駅のあまねのネタバレレビュー・内容・結末

きさらぎ駅(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

言わずと知れた有名な都市伝説『きさらぎ駅』。そのきさらぎ駅を題材にした、『きさらぎ駅脱出RTA』とこっそり(?)呼ばれている映画笑。
ネットの評判は、集約すると以下の二つ。

・怪異を物理で解決
・ホラーだけど怖くない

なるほど。ホラー映画は苦手だけど、これは観なくては…!

ストーリーはいたってシンプルだ。
主人公の堤春奈は、きさらぎ駅に行って唯一生きて戻ってきた『はすみ』という女性の話を取材する。
取材後、春奈ははすみと同じ方法で「きさらぎ駅」に到着。事前に仕入れた知識を駆使して怪異を退け、囚われた人々と共に脱出を目指す――。

どうやらこの世界の怪異は、(ほぼ)同じものを繰り返す仕様らしい。
脱出できずに囚われたままの人たちの記憶はリセットされ、まったく同じ会話を繰り返すNPCになる。
脱出できない限り、永遠にNPCのままなんだろうなぁ。

既に情報を持っている主人公は、力づくで怪異をねじ伏せていく。
あまりにも問答無用で、他の人たちがドン引きすることも笑。
なるほど、RTAだ笑。
ただ、前評判を聞いて期待していたほど爽快な物理演出ではないし、主人公が無双しているわけでもない。
事前に情報を仕入れているとはいえ、自分の体験としては一周目だ。それなりに怯えているし、迷ったりもする。なので、ちょっと物足りない感じがした。
この辺は、ネットの評判に私自身が引っ張られ過ぎたかな。

基本的には、同じ話を二度繰り返すという内容。
一回目は「はすみ」視点の実況で、二回目は「春奈」視点のRTA。
時間的制約があるので、怪異のボリュームが少ない点はしょうがないか。

ラストはホラーらしく後味悪め。
人の心の醜さ、ずるさなんてものも感じられる。
でも、そんな当たり前のものを提示して終わるわけがない。
どこまでもゲーム的だ。
「はすみ」の一周目、春奈の「二周目」。最後まで見ると、三周目以降の期待がぐんと高まってくる。
しかも、RTAの質がぐんと上がりそうな予感だ。
この映画の醍醐味は、観終わった後のこの昂揚感にあるのではないかと思った。
二周目はこうだった…では、三周目は? もっとすごいの魅せてくれるんじゃないの?と笑。
三周目の次は四周目。その次は…と続いてく先を想像したら、冒頭で私が書いたような、爽快感ぶっちぎり脱出RTA大会になってるんじゃないかと、そんな気持ちになった笑。
もちろん、三周目のお話なんてない。
仄めかされているくらい。
それ以降の話なんて、もはや私の妄想だ。
でも、そこを期待してしまうような終わり方だった。

そんな気持ちから振り返ると、ラストの後味の悪さなんてなんのその。むしろあのラストは、これから始まるRTA脱出大会本番に向けてのゴングのような気さえする。

面白かった。
ちょっと物足りない感じがあったけど、次回作があったら観たいと思う。
ただ、純粋なホラーを求めているのなら、ちょっと違うと感じるかも。
あまね

あまね