あまね

天使にラブ・ソングを…のあまねのネタバレレビュー・内容・結末

天使にラブ・ソングを…(1992年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

クラブ歌手のデロリスは、愛人であるマフィアが人を殺すのを目撃し、命を狙われることに。
警察に身柄を保護され修道院に匿われるが、あまりの禁欲ぶりに反発ばかり。けれどそのうち、陽気に周囲を巻き込み始め――。

可愛い。ひたすらに可愛くてほのぼのして心があたたかくなる、笑顔が自然にこぼれてしまうような、楽しくて幸せな映画だ。
マフィアの愛人でクラブ歌手、どう考えてもガラの悪いデロリスだけど、本当にいいヤツで、可愛くて、最高だ。
だって彼女は見下さない。誰の生き方も、どんな考えも、自分の生き方も。それがどんなに自分にとってそぐわないものであっても、笑いながら聞いてくれるし、一緒に前を向いてくれる。そんな女性だ。

デロリスの周囲のシスターたちも、これまた可愛くてほのぼのしてしまう。
禁欲的で、厳しくて、けれどひたすらに純粋で優しくて信心深い。
そしてコメディらしく、彼女たちの純真無垢さと無邪気さ故の行動が、ただただコミカルで、笑いを誘う。
最高なのは、それが誰かを嗤うような嫌な笑いじゃないことだ。
楽しくて幸せに笑える、そんな極上の笑いなのだ。
修道服のままでカジノをうろうろしたり、飛行機に無賃乗車しようとしてひたすらパイロットに祈りながら迫ったり笑。こんなに可愛いシスターたちが仕えているなんて、神様が羨ましい。

私が何より好きなのは、デロリスが聖歌隊に歌を教える場面だ。
高いところから「教える」のではなく、一人一人に寄り添いながら歌の楽しさを味あわせてくれる。歌うことを楽しいと思わせてくれるようなそんな指導で、ああデロリスって歌が本当に好きなんだなぁと感じられた。
それまでの指導者だった厳しいシスターに対しても、プライドを折るようなやり方ではなく、むしろ彼女を立てるように進めていく。
その流れからの聖歌隊の見事な歌は、圧巻だった。
一緒に踊りたくなるくらい、楽しかった。

マフィアの愛人であばずれのデロリスだけど、物語の最後で「彼女はシスターです」と院長が言った通り、本物のシスターだったと思う。
修道女たちの仲間だからというだけでなく、彼女の心の在り様は、確かに色々な人たちを導くものだったから。

明るい気持ちになりたい時に見て欲しい。
絶対に心が軽く、楽しくなる映画だと思う。

敵役のマフィアでさえ可愛いんだから、もうたまらない。
あまね

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