叡福寺清子

コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ーの叡福寺清子のレビュー・感想・評価

3.3
フランスでは良妻賢母目指して多くの少女が,家政学校に寄宿していた頃(詳しくは『5月の花嫁学校』を観てね),USAでは闇医者が中絶手術を実施していました.こんばんわ.三遊亭呼延灼です.

刑事事件専門のウィル弁護士さんの奥様ジョイさんは,毎日ハイソな生活で,ベトナム戦争反対デモもどこか他人事でした.そんなある日,自身の妊娠が心臓を圧迫していると知ります.担当医に中絶を要望するも,病院側の都合でその手術が却下されます.患者本人であるジョイさんが望んでいるにもかかわらず,です.絶望するジョイさんでしたが,たまたまバス亭に貼られていた「妊娠?助けが必要?ジェーンに電話を」というチラシを目にします.藁にも縋る思いで,電話をかけたジョイさん.そこから,彼女の闘争の人生が始まるのでした.

違法下での中絶といえば,『あのこと』を思い出します.望まぬ妊娠をしてしまった女子大生.しかし,当時は中絶は違法.知識のなかった女子大生は,最後の最後・・・私が付けたスコアは3.8.最後の最後.音に注目して下さい.

それはともかく,本作はジェーンとしての活動を中心に描かれます.活動にのめり込むほどに家庭が疎かになります.さらには,弁護士さんがご主人なのに,本人は善意とはいえ,違法な中絶手術の斡旋と実施.孤立したであろうことは容易に想像できますが,そこはあまり深堀りされません.むしろ,ジェーン活動で活き活きとするジョイさんが描かれます.
私はてっきり娘さんが妊娠.ジェーンに電話.でもって,「なんでかーちゃんいんの!」「あんた,まだ子供のくせに!!」って修羅場があるもんだと思っていました.結局娘にもご主人にも,ジェーンの活動はバレちゃうんですけどね.
偉かったのはご主人.お隣のラナさん(ケイト・マーラー!!!!)と不倫関係になる一歩手前で踏みとどまりました.私なら秒でパンツ脱ぎますけどねッ!しかも,なんやかんやあっても,結局ジョイさんの活動を支援してる.

にしても,同じ違法中絶をテーマにしても,政治活動に昇華させるハリウッド映画と,あくまで個人の問題として描くフランス映画.文化の違いといえばそれまでですが,アプローチが全然異なっていておもしろいですねぇ.誰か卒論にしませんかしら?