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JUNG_E ジョンイのRのネタバレレビュー・内容・結末

JUNG_E ジョンイ(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

2022年の韓国の作品。

監督は「新感染 ファイナル・エクスプレス」のヨン・サンホ。

あらすじ

気候変動で荒廃した未来、移住先で起きたシェルターで起きた戦争を終わらせるため、クロノイド研究所が伝説の傭兵ユン・ジョンイ(キム・ヒョンジュ「シンソッキ・ブルース」)の脳データを複製した戦闘AI搭載のロボットの開発に着手してから数十年、成長したジョンイの娘ソヒョン(カン・スヨン「審査員」)はAIプロジェクトのチーム長となっていた。プロジェクトが行き詰まる中、ある日、ソヒョンは転機を迎える。

Netflixにて、無作為に選んだ中から。

韓国発のSF映画。

国をかけて映画産業に精を出す韓国、全体的に映画ひとつひとつのクオリティは恐ろしく高いわけなんだけど、こと「SF」ジャンルに関してはイマイチ上手くいってないというか、代表的な作品が個人的には思い当たらない中で、Netflix配信作ということもあり、今作はなかなかに頑張っていた印象。

お話はあらすじの通り、なるほど冒頭の主人公ジョンイによる、ロボットとの激しい戦闘シーン含め、冒頭のテロップから内戦を戦う傭兵ものか!と思っていると全然そんな方向には転がっていかない。

どちらかと言うと、SFアクションは味付けに過ぎず、軸となるのは「母娘もの」。伝説の傭兵ジョンイは既に過去の戦闘で植物人間状態であり、彼女の脳データを使って内戦を終わらせるほどの戦闘AIを作ろうと奮闘する会社クロノイドとそこで働く、ジョンイの実の娘のソヒョンのアレコレを描く前半。

もうジョンイが植物人間になってから数十年が経っていることもあり、娘のソヒョンも立派なおばさん。で、そんなもう1人の主人公、ソヒョンを演じるのがカン・スヨン。この女優さんの出演作は観たことがなかったんだけど、どうやら本作が遺作ということらしい。ご冥福をお祈りしております。

で、このソヒョン、どうやら余命幾許もないということがわかるんだけど、ソヒョン自身もそれを宣告する医者も割とライトな感じで「ん?」となっていると、どうやらこの未来世界ではジョンイと同じく脳データをアンドロイドに移動して生きることができるというらしい。ただし、そのアンドロイドに移籍するためにはお金がかかり、1番いい機能のAタイプから人権は保証されず、移動した後はどんなことをされても文句が言えないCタイプまであると…ふむふむ。

で、そんな医者との会話が終わったら…お前アンドロイドなんかーい!ということで、ここからはそれまで会話していたキャラクターたちがもしかしたら既にアンドロイドなのかも…という前提でのお話に移行していく。

その上でお話が進んでいくんだけど、クロノイドの所長サンフン(リュ・ギョンス「ベイビー・ブローカー」)が実はアンドロイドでしたーってわかった時は、驚きよりも、やっぱなー!!と感じてしまった笑。だってこいつめちゃくちゃロボットっぺーもんな!!ただ、それよりも驚いたのがこのサンフンが会長のスペアだったと言う点。ただし、会長的にはもう移動する意志はないらしく、この愛らしくも非常に無能なサンフンを一見子どものように、ただその実無用の産物として飼い殺ししているという点でかなり不憫だった。

で、またその会長から内戦が終息しつつあるという事実も告げられ(えー!)、戦闘AI産業もオワコンとして、やめちゃおうと朗らかに告げられるんだけど、いやいやあまりに勝手が過ぎませんか!!ソヒョン的にはジョンイは数十年もロボット相手に戦わされてるんですよ。

さらに可愛そうなのが、その前にソヒョンの元に本部からジョンイオタクの研究員が配備されるんだけど、ソヒョンがそこ研究員の元にいくと、実のお母さんであるジョンイがあられもない姿に…。

で、その研究員から、どうやら生前、Cタイプ認定されたジョンイは戦闘AIとしての機能が果たされなくなったことで、アイドル的人気もあったことから今度は愛玩として売り出そうとすることを告げられるんだけど(つまりその研究員はそのために赴任した)…いや冷酷かよ。なんというかアンドロイドよりも会社側の方がよっぽど人間味がない判断で、すげぇ、このシーンは可愛そうだったなぁ…。

ということで、そんな事実は受け入れられるわけもなくソヒョンは独自でジョンイを逃すことになるんだけど、そうなるとようやく冒頭以来のアクションパートが激しくなってくる。他の戦闘AIとの生産エリアを舞台にしたアクロバティックな組手然り、終盤で、遂に自分がアンドロイドだと言う事実を知らされたサンフンとのロープウェイ内部を舞台にしたクライマックス感溢れるバトルとここはやはり「新感染」のヨン・サンホ。見せ方が上手い。

ラストは、母娘ものとしてドラマチックに締めるところも上手く纏まっており、確かに思ったような作品ではなかったけど、さすがヨン・サンホ、ジャンル的には変わり種で一見地味ながらも、しっかり面白さは確保してくれる作品。
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