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牛久のolnのレビュー・感想・評価

牛久(2021年製作の映画)
4.5
君がほしいものは何?
新しい服 新しい靴
たまには贅沢な食事と背伸びしたお酒
一緒に笑ってくれる誰かが隣にいる
そんなことを当たり前だと思える、平和な国の生活がほしかった

ここは日本
日本人が知らない日本

終わりのない絶望の日々
誰の記憶にも残らない日々

今日も朝になれば陽が射す
日のもとには陰が射す

選択肢はなかった
流れ着いた、オモテナシの国






感想です。

絶句、、日本という国は、何故こんなに外国人に不寛容なのでしょうか。インターネットの発達で海外との繋がりを持ちやすい環境になった現代において、いつまで前時代的な価値観で、しかも国の政策として人種差別を行うつもりでしょうか。そもそも日本という国は、古くは鎖国などというクレイジーな制度を〜、、みたいな書き出しになりますね。私が外国人でこの映画を見たら。
ウクライナのことでもいいですし、BLMでもいいですけど、海外の国や人種間の争いを見て、対岸の火事だと思っている人がいたら、”時計じかけのオレンジ”方式でこの映画を観せてやりたいです。

ところで皆さん、日本の難民認定率が何%か知っていますか?カナダ55.7%、アメリカ29.6%、ドイツ25.9%、フランス18.5%、日本0.4%ですって、、最悪の意味で桁が違います。私も本作を鑑賞しなければ、知ることはなかったでしょう。
作品中の「もう笑えない」という表現に、こちらも笑えなくなります。特に、家族で渡来した人たちが、収容施設のルールによって、どんな事態に見舞われているかを告げるシーンは、感情を表現する言葉が見つからない程の憤りを覚えました。

内容そのものもさることながら、こんなにも私が心をぶち抜かれたのは、きっと字幕の演出も相まってのことだと思います。
普通の報道や文献なら、多少体裁を整えるであろうカタコトの日本語。それをあえて、発された形のまま文字に起こして、その人が話した本物の言葉をそのままぶつけられることで、恐ろしいほどの現実味を体感します。

この問題をもっときちんと理解しなければならないと思って購入した、ほんの少し高い価格設定のパンフレット。伝えたい言葉に溢れていて、これを1000円で買えるなら安い買い物だと思える、読み応え充分なテキストでした。
特に作中でも印象的な、とある人物が語る夢、「自分が働いたお金で、自分の奥さんの誕生日にプレゼントを買ってあげたい。」という言葉には、少しの間に様々な感情が押し寄せてきて、視線を外せなくなりました。

鑑賞中、これはレビューに書こう、と思ったことのほんの一部しか書けていませんが、既に長々とした文章になってしまいました。
この作品は、映画好きだからとか、社会問題に興味があるからとかではなく、少しでも多くの日本人が観るべき作品です。何でもかんでも受け入れれば良いという、短絡的な結論を出せる話ではありませんが、この作品を観て、問題を知って、考えることは絶対に必要です。
今は1人でも多くの人に、"牛久"という映画に興味を持ってもらえることを願います。
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