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関心領域のolnのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
2.5
【生活は根を張る、普通は普遍ではない】
ジャンル:日常系

如何に捉えるかが重要なのだと思うので、誤解を恐れずに綴りますが、本作はとある家族の何の変哲もない日常を切り取った映画です。
子宝にも恵まれ、休日は家族団欒の時間を過ごし、家の目の前に主人の職場があり、主人は従業員にも慕われている。そんな主人が異動になり、単身赴任し、また戻る。たったそれだけなのです。特異なことがあるとすれば、主人はアウシュビッツ収容所の所長なのです。
そんな環境ですから、焼却炉の稼働音や、怒号、銃声、悲鳴なんかが日常に溶け込んでいて、普通に暮らしている。幼子は異常を感じ取っていますが、いずれ兄や姉たち同様に、それらが日常と化すのでしょう。それを当たり前に受け止められなかったとある人物、その人物の行動に腹を立てる根を張る決断をした人物。
価値観とは環境や時代の変数によって形成され、人それぞれの普通を培っていくのです。

そういった学びはあるのですが、映画として面白いかと問われればノーコメントです。
敢えての固定カメラ撮影が相まって他人事感が強く、作中の登場人物よろしく「こんなものだ」と割り切ってしまえばそれまでで、何の感情も掻き立たないまま通り過ぎることさえできる内容でした。
私は関心領域を閉ざし、アウシュビッツ収容所の目の前の家で生活できるタイプの人間のようです。住みたくないけど。
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