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デューン 砂の惑星PART2のolnのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.3
【ヘイルポーーーーール!】
ジャンル:SFで学ぶ思想設計

とんでもない映像を見せられ、とんでもない音声表現を喰らわされたという第一印象。没入しすぎて途中から気にも留めていませんでしたが、全編IMAXカメラで撮影された作品であるうえに、然るべき場面において音響でシアターが揺れる体験、せっかく鑑賞するならばIMAXシアターでの鑑賞を推奨します。なにより、砂虫が押し寄せるあのシーンの絶望感を味わうには、IMAX必須でしょう。

さて、本作で着目すべき点は多々ありますが、個人的なポイントを絞るならば、人の生き様に目を向けさせられたことでしょう。本作にヴィランはいないとさえ感じました。
当然、主人公は存在しますから、陰陽のコントラストが明白なヴィジュアルにはなっています。しかし、これらを分け隔てるものは、信仰や思想の違いであり、自身がその環境で育ったら、そのような認知バイアスはかかり得るという実感を持たせてくれます。
現実に則した具体的な名称を挙げることは憚られますが、スティルガーの盲信的な信仰もあれば、ハルコンネンの強烈な先導力、皇帝の社会思想がそれぞれに交錯し、イェルサレムさながらに一つの聖地を巡り争う、そんな人類史を彷彿とさせます。
私は無神論者ですなんて宣いがちな現代日本人だって、正解も形もない資本主義の設計思想に乗っかって、金を稼げば豊かになると信じているわけですから、人はいつの時代も何かに縋って生きているのです。どこぞの部族とディスカッションでもしたら、そんな窮屈な暮らしで楽しいかい?と一笑に伏されそうです。
脱線しましたが、キャラクターを取り巻くヴィジュアルや言動からも、信仰とは人を形成する大きな要素なのだとビシビシ伝わりました。

加えて、飽きさせない構造といいますか、初回登場時からガラリと豹変する登場人物たちの印象も見どころの一つでしょう。自分自身の挙動に照らし合わせても、知らない人は警戒しますし、事前の連絡がなく意に添わない提示をされれば感情が沸きますし、強烈なビジョンと実績が伴えば信用します。そんな普通の機微が適正に描かれていて、どのキャラクターにも感情が宿って見えて、大味になりそうなこの規模感の中で、平然と一人ひとりの人間を描いていることが光って見えました。
個人的イチオシですが、段階を経て、謎多き人物から半笑われおじさんにメタモルフォーゼしていくスティルガーが、とってもキュートでした。みなさんの推しがきっと見つかるはずな、DUNE Part.2でございます。


余談
前作に引き続き、絶妙な形状と充実したインタビューのパンフレット。作品を思い返すには充分な画面カットも掲載されていますので、本作を気に入った方は購入推奨です。

パワーワード
・ネズミどもを皆殺しだ!
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