【歩いても歩いても小舟のようにわたしはゆれて】
ジャンル：家族ホラー
家族とは、一番近くにいる他者なのです。ずっと一緒にいるから理解しているつもりになりますが、他者はあくまでも他者ですから、全てを理解することなど不可能で、妥協と許容の積み重ねの上に成立している関係性なのだと思います。
フィクションの中の家族は、綺麗な上澄みを掬うか、深淵の泥濘みを見せるかに触れていることが多く、どうしたって嘘くさい家族に映ってしまいます。そんな家族を現実味のある姿で描くだけで、長編映画が撮れてしまうのだという事実。何をどう褒めればいいのかは分かりませんが、当然の顔をして画面上を流れていく怪演の連続に打ちのめされました。
特に印象深いのは、樹木希林演じる、おばあちゃんのあの時の一言。言われた側も気まずそうにしているのは明らか、だけど建前で言っているのだろう、それを真に受ける程度の人物なのだろうと理解したのも束の間、現実はもっと恐ろしい思慮の中に沈んでいるのだと知らされ、絶句の海に引き摺り込まれます。
これがリアルだと断言することには語弊が伴いますが、多かれ少なかれこういうことがあるよね、家族なら。という実感を持って、背筋が寒くなる作品でした。
