oln

コットンテールのolnのレビュー・感想・評価

コットンテール(2022年製作の映画)
3.5
【ありがとうと、ごめんと、これからのこと】
ジャンル:家族に成るということ

なくしたものが大きければ大きいほど、心は空虚になって、自分が自分ではないように思えます。
懐古する兼三郎は、決して言葉数が多いわけではありませんが、表情や行動から感情が読み取れるように生きています。しかし、現在は何を考えているのかが分からない、息子のトシにとってさえも。心ここに在らず、だが家族であるという形式は確かに存在する。だから面倒なのです。
息子はどうしたって父を切り離せないし、父は息子に迷惑をかけたくない。絞り出すように良いところを見せようとして、空回りして、思い出に浸って、時間だけが過ぎていく。
コットンテールを追いかけて時間を忘れた思い出を抱いて、果てのない傷心旅行でもと浮かべても、現実は影のように付き纏う。赤の他人からの言葉でふと立ち止まり、寝ぼけ眼を擦る。そしてまた、誰かと共にコットンテールを追いかける日々は続いていきます。

時計の針は止まって見えたり動いたり、人生は夢と現の狭間を行ったり来たりを繰り返す。そんなことを描いているように見えて、鑑賞中にきのこ帝国が脳内再生されました。

ゆらゆら揺れて夢のようで
ゆらゆら揺れてどうかしている
oln

oln