oln

52ヘルツのクジラたちのolnのネタバレレビュー・内容・結末

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

【独りではないのだから一緒に生きよう】
ジャンル:御涙頂戴

杉咲花は、とても上手にキナコちゃんを体現していました。時に空虚な雰囲気を纏い、時に悲壮感に溢れ、時に満たされていて、立ち居振る舞いだけで彼女がおかれている状況を知らせてくれます。しかし、端的に言って、映画として稚拙に感じる演出やカットが散見され、「こんな話がありあましたとさ」が、ぶつ切りに提示され、感情移入する間もなく通り過ぎていった印象です。

原作未読のため原作通りなのか、映画シナリオ上の演出なのかは不明ですが、そのように描くなら、どうして新名がそのような選択をするに至ったかの掘り下げが無いことが、大きな不足に感じます。登場した瞬間から信用すべきではない人物であることが明白なのですから、それを裏切るならキナコが選択を誤るイベントが必要でしょう。そんなサプライズもなく順当にレールを辿り、最初からわかっていた帰結になるのですから、欠伸しか出ません。
新名もきっと愛情に飢えていたのでしょうから、何故そのように人格形成をしてしまったのかが理解できる構造になっていれば、如何とも割り切れない、複雑な感情を抱けたことでしょう。

また、キナコちゃんの人生に分岐点があるとすれば、アンさんのあの時の回答でしょう。そこに適切な感情が無いのであれば仕方ありませんが、そうならそうと、時間をかけてでも曝け出して歩み寄ることが必要だったと思うのです。その覚悟がないのであれば、他者の人生に口を挟むだけ野暮というものです。
人と違う恐怖は理解できます。自分は身を引いた方が良いと思う気持ちは分かります。だけど、幸せを願い、一度手を引いたのならば、それを自ら離してはならないと思うのです。
oln

oln