HidekiIshimoto

見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界のHidekiIshimotoのレビュー・感想・評価

4.0
抽象絵画の豊かさもだけど、具象画描写力の高さに驚愕だった。ほぼドガ並。けどもっと驚くのはこの女流画家がその強力な技をあっさり捨てて、まだ誰もやってない(つまり誰にも理解されない)抽象表現にシフトチェンジしたこと。その技術は抽象表現でも鉄壁の画面構成等に発揮されてはいるけど、このやり方は社会的成功の面では逆にリスクが高いわけで、余程の確信がないと踏み込めない。彼女の作品にはそういう確信が全画面に漲っていて、それこそが男社会から排除されてきた理由な気がする。要は権威的な男達というのはものを考える女が苦手なのだ。嫌いなのだ。いや脅威なのだ。なので自民や維新の方々なんかは(たぶん立憲の一部の方々なんかも)彼女の作品を反射的に拒絶する気がする。ゲージュツは難しいネとか言って無視する気がする。不可解な「死後20年は〜」の遺言も下手すりゃ全作品破棄の予測に立った指示なのかもしれない。それでも彼女の確信は生き延び、こんなドキュメンタリーも撮られた。これもたぶん女の時代到来を告げている。つまり男の権威保持の為のズルが晒される時代の到来。ああ俺もまだなんか晒されてないズルがあるかも…あるよな。である。