このレビューはネタバレを含みます
10万円はご褒美、貴方は何に使う？
「そのお金は自分のお葬式に使う人も多いんですよ」
なんて台詞が淡々と出てくるスタートに、鳥肌が立つのを感じる。
75歳で死ぬことを選択し、もらった支度金で最後の一日を楽しんだ後は、自分で自分の最期を片付ける。
その後は行政にお任せします。
冒頭からまるで『ニトラム』の様なショットガンから始まり、日本の未来も銃が出てくるのかと思いきや、矛先は増え過ぎてしまったお年寄りへと向かっていく。
本作で描かれる「PLAN75」は、遠い未来の現実に、起こり得る日本の未来を映している気がして、考えれば考えるほど、感情が行方不明になる。
今までの人生に幸せはありましたか？
悲しんでくれる人はいますか？
そうではないから貴方は死を選ぶのですか？
そう聞かれている訳ではないのに、ずっと苦しかった。
賠償さん演じるミチが何をするにも丁寧で、清く美しく素敵な人で。
でもそんな人も「PLAN75」を見据える未来。
日本って、これから変わっていけるのかな、私たちがこの歳になる頃には変われるのかな。
そんな気はしないけど。
警告がずっと鳴り響いている様だった。
お年寄りの方にあたる光の明暗。
死を迎える時の部屋が、まるで赤ちゃんの新生児室みたいに見えて、隣合せの死と生について考える。
磯村くん演じる役所の人間とおじさん、”先生”と呼ぶコールセンターの女性、外国人労働者に看取られる未来。
どのシーンにも考えることがあって、公開されたらもう一度ちゃんと観たい。
劇場で聴く、倍賞さんの歌声も楽しみ。
余談だけど、自分の中で『PLAN75』の話題が出た時に思い出したのは、前に某業種でバリバリ働いている女性たちと食事をしたときに、声をそろえて「60歳になったら仕事を辞めて、スイスに行って、安楽死を選ぶ」というもの。
まるで「ディズニーランドに行こう」くらいの気楽さで話していたのが、印象に残っている。
60歳になるのも、75歳になるのもまだまだ先の話だけど、その歳になった時に彼女たちはまた同じ事が言えるのかなあと、ぼんやり考えてた。
自分自身が75歳になった時に「PLAN75」を選択するのか、今は未だ答えが出せそうにないなあ。
