久々に、点数の付け方がわからない作品を見た。
何から書けばいいのか……とにかく言えるのは、「生きることは寂しい」ということと、老いとは「孤独」だということかもしれない。
ずっとディストピアなんだ、この映画は。とてもリアルなディストピア。
冒頭で、「増えすぎた老人を支えるのは若者なのだ」という主張が衝撃的な映像とともに示されるんだけど、ずっと最後までその社会構造で描かれてるのがとても怖くて。
この物語には「若者と老人」しかいない。
75歳で安楽死を選ぶことが出来る政策、plan75を担当している役所職員も、plan75に申し込んだ老人の精神ケアをするのも、無くなった人の遺品整理をするのも、若者なのだ。
(最後の遺品整理に関しては出稼ぎに来ている東南アジア系の人達ばかりで、これはまた別な社会問題が見えてくるが。）
だから老人と若者の間にいる、社会的地位が高く、老人という年齢に近い中年層の存在がほとんど消されている。
その違和感が強烈だと思った。
まあ結局、「現場」に出るのは若手だからなあ。
plan75の内容も結構ガバガバで、これは支度金だけ貰ってトンズラする人多いだろ……と思うなど。一種のバラマキだよね。
結局は真面目な老人だけが死んでいく。そんな世界なんだろうな。
私、この手の作品にはどうしても物語的救いを求めてしまうのよ。
そういう意味では、あのあまりに現実離れしたラストは良かった。
いや、そんなことは無いかな。死に直面した人と、その周りにいる人間はあれくらいのことをやるのかもしれない。
だけど絶対に、あの展開は救いなんかでは無くて。
あんな終わり方をしてるのに、どこかリアルだなとも思った。
それから、この作品の撮り方がかなり好きだなあと思った。
肝心なものを見せないで、登場人物の表情や周囲の環境で語らせるやり方、癖になる。すき。
監督さんはこの作品が初の長編映画らしいけど、もっといろいろ作ってくれたらうれしい。
