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ザ・ホエールのkalindaのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.0
第95回 アカデミー賞 
・主演男優賞 受賞
 ・メイクアップ&ヘアスタイリング賞 受賞


「誰しもが人を気にせずにはいられない」
「人間は素晴らしい」
「正しいことをひとつだけでも…」(チャーリー)


重い…
ストーリーが重い…
ズーンと沈んでしもた。

チャーリーを演じたブレンダン・フレイザー。
彼の目の演技が本当に素晴らしい。
大きく澄んだ瞳。終始悲しそう…。
オスカーも納得。


#レスラー   (2008)
#ブラックスワン (2010)
ダーレン・アロノフスキー監督作品の中で
好きな作品。
今回の作品も含め、
この作品たちに共通するのは
人間の心の奥深くにある
狂気や醜い部分も描いているということ。

外は暗く激しく雨が降り、
終始息苦しくなるような
決して綺麗ではないチャーリーの部屋。
重苦しい空気。
静かな会話劇が淡々と続くので、
舞台を観ているような感覚。
監視カメラのように
117分 ほぼチャーリーを映している。

あることをキッカケに
チャーリーの暴走(過食)が映し出される。
“レスラー“ のランディ。
“ブラックスワン“ のニナ。
そしてチャーリー。

誰にも止められない、人間の狂気。
スクリーン越しにも伝わるくらい恐ろしい。
この監督はそれを描くのが上手い。


過食というのは
自傷行為でもあると私は思う。
勿論、悪い部分ばかりではなく、
一瞬でも心が満たされもするかもしれへんけど。
摂食障害は
ドラッグ、アルコールなどと同じ
生死に関わる依存症。
難病指定されていたほどの症状にも関わらず
世間ではあまり重要視されてへん。
なんでなんやろね。おかしいよね。
死ぬよ。ほんまに死ぬ。


チャーリーは恋人アランを亡くし深く傷つき、
家族を捨てた自分にも責任を感じ、
傷つき満たされないまま
あの姿になってしまった。

心が優しく悲しみや怒りの矛先を
自分にしか向けれない。

孤独や悲しみ寂しさから
誰しもがチャーリーのようになる可能性もある。

アランの妹である看護師のリズ。
彼女の献身的なサポートがあったからこそ
チャーリーはあそこまで生き延びられたんやろね。

ラストのチャーリー。
少しだけ救われたんちゃうかな。
もう充分やよね。

観る方によったら、
チャーリーは家族を捨て
愛する人を選び、
自分勝手、自業自得に感じるかもしれへん。
たしかに間違いではない。
せやけど自分に嘘をつく人生は苦しく辛い。
自分に正直になる。
難しいことやけど、チャーリーはそれをしただけ。


「白鯨」をあまりよく知らず、
宗教的な思想もふんわりとしかわからず
全て理解はでけへんかったけれど、
とにかくブレンダン・フレイザーの
鬼気迫る姿が素晴らしかった。

2012年に上演された舞台劇「ザ・ホエール」
原案であり、
今回映画の脚本を担当された
サミュエル・D・ハンター
彼の大学時代の体型による経験も
この作品を書いたきっかけらしい。


もうさ、体型とか、性別とかさ、
誰が好きとかさ、
いいやん。
やいやい言うのんやめようや。
みんな仲良くしよ。
それぞれでいいやん。
自分らしくいこうや。

とまぁ、希望を言うてみました。
(頻繁に言うてるわ。笑)
ま、理想かもやけどね。
そんな世の中が訪れますように。

自分に正直に…。
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