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ザ・ホエールのギャスのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
3.2
最後まで一気に見れた。
また一つマイノリティ男性の魂の浄化物語か。もちろんそれはわかっていて鑑賞したのだが、ちょっとお腹いっぱいに。
傷を抱えた心の持ち主が必ずしも正しい人間でもないと思えてしまったが、そこが少しリアルへと寄り添っているのかもしれない。

ブレンダンフレイザーの熱演もだが、深海のような部屋と眩しい外の光のコントラストや鯨を思わせる音楽など味わい深かった。

ネタバレ
死に至るほどの極端な肥満(潜在的で緩慢な自死)、ゲイ、恋人の死、学校生活に問題を抱えた利発な娘、新興宗教から離脱したアジア人の友人、女性たちに世話してもらい女性たちに成長させてもらうパターンなど、とにかく盛りだくさんで。

「あなたはいつも自分のことばかり!」と叱責される彼は、はたして結局たった一つでも正しいことができたのだろうか、と振り返って考えた。「お金」しか考え付かなかった寂しい人生は、男性という存在の哀しさを表したのだろうか。娘は、悪態も含めありのままの自分を完全に肯定してくれた(おそらくたった一つ正しいことをしたとすればこれなのだと思うが)そんな父に対する自分の態度を思い出して後悔せずに生きていけるだろうか。彼は、"自分にとって最高だから"という理由で娘のエッセイをそのまま提出させたが、それはそれ、学校を落第するかもしれないと彼女なりに必死な娘に父親としてそれが正しかったのだろうか。それに、肥満になること、それを見たピザ屋にビックリされることに傷つくこと、など自分を振り返ることの無さが見えて、いろいろと共感できないキャラクターだった。あと、アジア人の看護師の友人の存在は都合良すぎないだろうかとか。。

男性への同情を買うようなこの物語の作りは、ジョーカーを思い出して少し複雑な気持ちになった。

ただ、もしゲイが普通に生きられる社会であったなら、宗教が(家族が、社会が)アランを否定しなければ、この悲劇はなかったということだけは確かだ。
画面の中テレビで流れるトランプ当選?のニュースと、生きることが辛くなっていく、つまり彼が死にゆく過程が被って聞こえた。
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