このレビューはネタバレを含みます
映画というより、これはもう独立した一つの作品である。
淀川長治が言う通り、全編背景が書き割りであるが、「書き割り」というにはあまりに面白い、デフォルメされた絵が映し出されている。それは文字通り、表現主義ののキルヒナーやマッケが描く街の景色そのものである。大胆すぎる。
何よりもう、カリガリ博士の造形そのものがもはや作品である。スポット光に当たり、闇に浮かび上がるその姿は、不気味なような滑稽なような…。とにかく、単なるファンタジーの世界ではない、異様さがある。
映画としては今となっては極めて凡庸な展開だが、実は映画史に残る、極めて後味の悪い結末が待ち受けているので、侮れない。