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REBEL MOON ー パート1: 炎の子のblacknessfallのレビュー・感想・評価

REBEL MOON ー パート1: 炎の子(2023年製作の映画)
3.5
外連味、大仰、ペシミ王のザック・スナイダーとは思えぬ肩の力が抜けたスターウォーズ(ルーカス期)系のスペース・オペラに仕上がってた。
適度に予定調和の安心感と快感を刺激して苦痛なくハラハラドキドキさせて最後まで見せてしまう。作家性を抑えて職人芸に徹したのか?DCの時もこれぐらい力抜いてやってればあんなに酷評もされずに済んだんじゃないかと思うほど、普通の娯楽に徹していて驚いた。
だってさぁ、DC時代にマーベルのことを「安い民話」とか「安易なエンタメ」とこき下ろし、自分が手掛けるDCは「まあ、俺っちが撮るからには、そりゃあ、普遍的な哲学を内包した神話になるわけよ😬」てな具合にイキってたから、こんなに良くも悪くも普通の映画を撮るとは予想できないわけよ笑

ザック・スナイダーは変わったのだと思う。愛娘の悲劇的な死から。

『ウォッチメン』、『300』出世作はどれも外連味のある独自の映像感覚とアイロニーを含んだ神話的な悲劇を描いた作品で、それらは明らかにザック・スナイダーの核にあるもの。だからどちらも映像化の難しい原作の世界観や皮肉なメッセージを難なく映画に落とし込めていた。そういう視線で評価すればザック版『スーパーマン』も理解はできる。出自の悩み、正義と自己安住の選択の苦悩、テーマが『ウォッチメン』にそっくりなんだよな。ちょっと話は逸れるが『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』、スーパーマンの力を怖れパラノイアになり、手段を選ばぬようになるバットマンの神経症的な焦燥感と不安、"アレを潰さなければ世界が終る"という観念に憑かれてるあの病的グルーブ。当時はピンと来なかったけど、今は分かる。共感できる。それぐらい忌まわしい者達に支配されている実感がある。自分達の政策の不作為が作り出した貧困層をバッシングし切り捨てながら裏金で私腹を肥やす冷酷で欲深い勢力。早く奴ら一掃しなくては。どんな手段を使っても。という観念に縛られギリギリ胸を締め付けられる苦しさが日増しに大きくなる一方だ、、

話を戻す。とにかく噛み砕いていうとかっこいい映像で悲劇を撮るのが好きなザック・スナイダー(オリジナル脚本作の『エンジェル・ウォーズ』の無慈悲なまでのバッドエンドを見よ。)だったけど、自身に撮ってた映画と同じような悲劇が訪れ、そこが変化したのだと思う。
そして新たな視点、拘りができたと思う。
悲劇後の初作品の『アーミー・オブ・ザ・デッド』でも本作でも父と娘の関係性に言及してる。本作は血を繋がった父娘じゃないけど、精神的な繋がりが親子で互いの目線と価値が合わずに争う話だから、やはり拘っているのだろう。そうせずに居れないのかも。
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