Habby中野

NOPE/ノープのHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

奇跡的に立った靴を見て、何か人外の力を想像した。惨事は人ならざるものからもたらされ、未知の攻撃はただ恐怖と敵意を沸き立たせる。人外の力は脅威だ。人間と、人間の歴史にとってのみ。
”nope”は人間の言葉、人間が否定に使う言葉。我々本意のタイトルは逆説的に我々を、発話者と発話自身を否定する。それは人間だけが(延いては英語話者だけが……)使う言葉だから。馬とともに歩んだ国の歴史、動物を支配して誕生した文化。侵略、使役、共存の欺瞞の果ての現在。”目を合わせたら吸い込まれる”それは目を見ずに支配してきた人間たちが吐き棄てたものたちによって否定される。
そしてカウボーイハットの形をしたその”逆襲”に対する方法が映像に撮ることなのは、そのまま軽薄に「馬」を撮った”最初の映画”への冒涜か、いやあの頃と変わらぬ欺瞞であろうか。
見下げてきたものを見上げ、目を逸らしてきたものに追いかけられ、吐いたものに吸い込まれる。ザ・ホラーな演出はすべてフェイクで本当に怖しいものは”怖くない”はずのもの。そう思い込んできてしまったもの。傲慢な”人外”、歴史の幕/膜に覆われ忘れられたもの。”nope”としてきたものがそこにはいる。
どうでもいいけどこないだ炒めようとフライパンに放り込んだ輪切りのナスが一つ立った。
Habby中野

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