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破戒のmakoのレビュー・感想・評価

破戒(2022年製作の映画)
3.9
《この戒めを破り 明日を生きる―》
◎78点

全国水平社創立100周年記念作品。
全国水平社(以下水平社又は、全水)は、大正デモクラシー期の日本において被差別部落の地位向上と人間の尊厳の確立を目的として創立された。被差別民一般を視野に入れた組織ではなくあくまで穢多系の被差別者を解放するための組織。
1922年3月3日、京都市岡崎公会堂にて創立大会が行われ、日本最初の人権宣言といわれる水平社創立宣言を採択した。
融和運動を批判し、差別の原因はあくまで「差別する側」にあるとして、差別への糾弾や啓発に重点を置いた。(Wikipediaより)

原作は島崎藤村、未読です。
60年ぶりに映画化。
1948年版。木下惠介監督、主演・池部良。
1962年版。市川崑監督、主演・市川雷蔵。
私は62年版を2年前に、没後50年特別企画「市川雷蔵祭」で鑑賞しました。


◆あらすじ
瀬川丑松(間宮祥太朗)は、自分が被差別部落出身ということを隠して、地元を離れ、小学校の教員として奉職する。彼はその出自を隠し通すよう、父から強い戒めを受けていた。


物語は大体同じですが、設定やエピソードが少し違ってたと思います。
2年前なので忘れているかもですが、こんなエピソードあったかなと思った所が数箇所ありました。
原作を読んでないので、どちらが原作に忠実なのかは分かりませんが。

本作も観てよかったと思いましたが、個人的には62年版の方が物語的にも演出的にもいいと思いました。
比べてはいけないとは思いますが、62年版の方が重厚さがあり優れていたように思います。

主演の間宮祥太朗さん、相手役の石井杏奈さんの演技はよかったです。
被差別部落の出自を隠さなければならない、知られてはならない苦悩を間宮さんは好演してました。
印象的な台詞は、
「なぜ自分の故郷を語れない。
なぜ好きな人に気持ちを伝えることができない。」

教員の同僚役、矢本悠馬さんも好演してました。丑松が被差別部落出身だと知らずに、部落民の事を悪く言う。だが、丑松の出自が明かされた時は素直に謝るし、受け入れる。好青年役でした。

ただ、演出が説明し過ぎな所がありそこは残念でした。もっと観客を信じて、余白があってもいいんじゃないかと思いました。
終盤の演出もいろいろクドい。邦画の悪い所が出てて残念。

猪子蓮太郎の設定、62年版の方がいいように感じました。
妻帯者だったのが本作では妻が出てなくて。
猪子の悲劇は妻がいたから、より際立っていたように感じたのにな。
猪子役、眞島秀和さんで悪くなかったけど、62年版は三國連太郎さんでそれを思うとちょっと💦
総じて、62年版がよかった。
でも本作もよかったよ😅

2022年、なぜ今これをと思ったけど、差別(被差別部落に限らず、人種、性差、セクシュアリティなど)については昔も今も変わってないし、逆にSNSにより匿名で気軽に発信できている現代の方が過激になってるんじゃないかな。
同調圧力も変わらないし、現代に通じるものがあり、意義はあると思いました。
被差別部落、穢多非人という記号だけで見ると差別したくなるだろうけど、その人となりが分かれば同じ人間だと分かる。これはどの差別意識も同じだと思う。


62年版のレビュー、興味がある方はこちらをどうぞ😊
https://filmarks.com/movies/34827/reviews/93116449


観客 20人弱
劇場鑑賞 #85
2022 #96
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