このレビューはネタバレを含みます
破戒って、信州の穢多について描写した作品だったのか。
なかなかの見応えがあった。
もともとの脚本の良さが伝わってくるが、主人公の穢多を隠し通すことに対する苦悩を、毎日夜だけ大嵐になるというような描写で表現してみたり、孤独感を出すために昼間でも日が当たるところにあまり居ず暗めの場面を多くしてみたりと、破戒の中では最新のリメイク作品であるこの2022年の本作ならではの細やかさやこだわりが度々見られた。他の破戒作品も見て比べてみたいな。
政府により穢多が平民に引き上げられたが、依然として国民の中で差別が根強く残っている時代。
演説中にヤジを飛ばす時も「平民に上げてもらった穢多のくせに生意気な」というような、"平民になったことは認めているもののまだ穢多扱いする"セリフが散見され、差別する者達の矛盾を剥き出しに表しているところが、差別する者達をいかに醜く表すか考えられているとともに移りゆく時代の不安定さも感じさせた。
主人公は教職についており、職場に分かりやすいぐらい主人公を恋敵のために蹴落としたい悪者と、これまた分かりやすいぐらい最後まで良い奴がいる。
見送りのシーンにまで職場の悪者が来るのだが、そんなことにまでわざわざ来て罵る所や、結果として主人公の穢多をバラしたのに恋では負けて帰っていく部分が性格的にも簡単でさっぱりしていて、原作を読んで本当のキャラクターを確認したいところ。
メインの子役達の、たとえば兄の弔いの日の泣きの演技などは心が持っていかれたのだが、子役たち全員が前に出る最後の教室シーンや見送りシーンは泣きの演技が強調されすぎていて、感情移入できなかったのが少し残念。