コブヘイ

デュアルのコブヘイのネタバレレビュー・内容・結末

デュアル(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「ツインズ」でもない、「ダブルインパクト」でもない、カレンvsギランは闘う準備がメインの藤子不二雄チックで冷めたトーンが味わい深いSFドラマ!

予告やポスターでいわゆるダブルゼータヴァン・ダムを期待した人は戻って「ガンパウダーミルクシェイク」を観よう。
本作は確かにカレンギランがクローンと闘う話ではあるが、アイデンティティーを揺さぶってくるヘビーな仕様でしかもひねくれている。

OPはルールに則った試合形式でデュアルを見せて、なるほどこれがクライマックスではカレンvsギランになるんだと思わせる。

カレンギラン演じるサラは少し感情表現が乏しいのか、どことなく生気が無さそう。
そんなサラが唐突に吐血。
病院に行ったらいきなり不治に近い病と死刑宣告。
この病院がまた、指を切断して急患と思われる人が待ち合い室にいる不穏さがイヤーな感じ。
先生も何かイヤーな感じで、うっかり恋人に病の事を話した事を委員会に言わないでくれとか、早速クローンを紹介してくる。

そんな問題のクローン技術は唾を出して一時間で成人女性が完成する。
ピザじゃないんだから。

サラの病気の事やこのクローン技術等、重要なSF設定はぼんやりしており、この辺りで私も『あ、この映画はクローンとのバトルがメインじゃない』と気づきました。そういやBGMも何となくノイズっぽかった。

クローンは何やらバグのせいで瞳の色が違うけど値引きしてくれたからOKと実に低いテンションを保つサラ。
車で移動しながら自分の事を教えるサラ。
好きな食事や体位。
少し首を絞められるのが好きなのはどうなんだサラ。

そしていよいよこの作品が姿を現す。
クローンサラは本人の事を知り尽くした上で彼氏や母親が望むサラを演じて二人と仲が良くなる。
元からその為のクローンなのに除け者気分のサラ。
考えてみると相手の都合のよい自分を選んで押し付けてくるという恐ろしさよ。

更には病気も先生の一言で完治。
死ぬ前提のクローンなのでどちらか生き残る為のデュアルが遂に決まる(恋人に捨てられてクローンからは訴えられるオマケつき)。

ここから生き残る為に一念発起したサラが戦闘訓練を開始。
目標はあれだが訓練が進むうちダンスを始めたりと見も心も変わっていくサラ。
この作品一番ホッとするシークエンスである。
そんな訓練の最終テストは犬殺し試験。「キングスマン」かよ。
本作もサラは犬を殺せないが、誤って別の犬を殺してしまうのが本作。
公園で会う双子の姉妹の話とか、体を使った別の支払い方法等、とにかく油断ならない所でひねくれている。

クライマックスは何とデュアル経験者逹のセラピーに参加してクローンと和解!
森に逃げる二人だが、何とサラはクローンに毒を盛られた!
だけどデュアルに来たサラはオリジナルだと主張?
恋人はオリジナルサラだと会話をするが母親の留守電はクローンのためのカラコンについての内容??
ロータリー式の交差点で泣き出すサラ???
どっちが生き残ったのさ!?

頭がぐるぐるくらくらする中、二人が入った森を固定カメラで写しながらタイトルとエンドロール。

見事な皮肉が効いた、重いトーンど温度が低い絵作りながらそこに引き込まれてしまう、一筋縄ではいかない面白さを持った作品でした!
コブヘイ

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