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オッペンハイマーのコブヘイのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
ノーラン監督最新作は原子爆弾を作りのお仕事映画!映画から圧力を感じるほどの圧倒的映画館体験ができるさすがの超大作! !

原子爆弾の父と呼ばれた物理化学者オッペンハイマーのお話で、原子爆弾を作るために科学アベンジャーズを集めて奔走するオッペンハイマー側をカラーで、原爆投下後に共産主義者として彼を追い詰めるストローズ側の話を白黒で交互に描いている親切設計でストレートな作り。

原爆という日本人としては複雑な気持ちになる題材ではありますが、これまでのハリウッド映画よりもずっと原爆がもたらした被害と向き合い、反省しようとする面が感じられた作りだと個人的には思います。
しかし何よりも、とにかくお仕事映画として無類に面白く、ノーラン監督作品らしい濃厚な3時間を映画館で堪能してきました。

カラーのオッペンハイマールートは、彼が大学で恩師となるニールス教授と出会いその才能を開花させ、原子爆弾の開発へと進む立身出世的なストーリー展開。科学用語が飛び交う難しい会話が多くなりつつも、オッペンハイマーを始めとして次々と出てくるキャラクターが個性的で楽しく、チームとしてまとまって開発が進んでいくお仕事映画としてポンポンテンポよく進む。極秘計画ということで街まで作ってしまうるスケールの大きさもあってとにかくワクワクします。
紆余曲折の末にたどり着くクライマックスは原子爆弾最終テスト。成功するのはわかっているし、その結果が何をもたらすかも知っているのにワクワクしてしまうほど、オッペンハイマーという人物に感情移入させられてしまう映画のパワーに飲みこまれていました。

悪役とも言えるストローズルートはサスペンス仕様。 共産主義者としてオッペンハイマーを裁判にかけるストローズの画策がメイン。
裁判が進む中で彼がオッペンハイマーを憎むようになった理由や政府側と合わせてオッペンハイマーを追い詰める動きがじわじわとサスペンスを盛り上げていく作り。
こちらのクライマックスは、裁判でオッペンハイマー側の人々による証言。 複雑な気持ちの奥様を始め、初期から親しい知人から意外な人物による擁護証言が繋がっていき、これまで落ちるしかなかった流れを逆転する作りが熱い。

話の面白さも勿論、ノーラン監督ならではのこだわりのIMAX撮影による絵作りにおいても美学が炸裂。
せっかくなのでIMAXで観ましたが、確かに人物のアップが多く、ほとんどが会話劇ではあるため、「デューン」のようなIMAXが映える壮大な絵は少ないながらも、役者のオーラまで写し取ったような迫力が画面からにじみ出るようでしたし、服が振動で揺れるほどの凄まじい音響効果も体験できましたので出来るならIMAXがおススメかも。

気になった原子爆弾の取り扱いについては、広島・長崎の惨状を描かない作りはあくまでもオッペンハイマーを描く作品だからで、彼が見た範囲に絞った演出であることはともかく、彼が原爆による被害の巨大さと残酷さを知って苦悩し、しかも周りにはそんな自分を英雄扱いする異様に空気挟まれ、これまでの人生をかけた核爆弾作りを否定する様を描かいているので、十分に原子爆弾を否定しているメッセージではあると個人的には思います。
オッペンハイマー自体を聖職者とせず、人格も不適合者だと作中で言わせたり、愛人との関係とその先にある結末、奥様のアルコール依存症などマイナス部分も削ることなく描いているのも一貫していると思います。
なによりノーラン監督自身としてもダークナイトライジングで見せたハリウッド映画おなじみの海の落とせば核爆弾もオールオッケーだよ!な取り扱いをしていたこと考えると驚くほどの変化。

面白さもあるだろうけど3時間の映画なのにアメリカでは大ヒットしたということで、一つの転換期になる可能性も持った、個人的にはノーラン監督最高傑作と言える作品でした!

最初からずっと出ていたアーネスト教授がジョシュ・ハートネットと気づけなくてびっくり。「オペレーションフォーチュン」で最近見たはずなのに! 体格ががっちりしていてまったく気づかなかった。。。
あとストローズが馬鹿にされたと感じた紅茶の例えが全くわからない。。。
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