シネマJACKすぎうら

燃えよドラゴンのシネマJACKすぎうらのレビュー・感想・評価

燃えよドラゴン(1973年製作の映画)
3.8
ブルース・リーのアメリカデビュー作ながら(彼自身が完成を見届けたという意味では)事実上の遺作となってしまった映画。
最初に観たのはやはり小学生のとき、たまたまリバイバル上映の機会があり、親父に無理やりねだって連れて行ってもらった。

個人的には、「〜怒りの鉄拳」や「〜への道」に比べるとやや見劣りがするものの、ハリウッド俳優との共演など、”世界へのお披露目感”が、ファンのワクワクを十二分に刺激する一本。

おそらく本作の凄さは、ヘタに”アメリカ風”格闘アクションの世界を持ち込まなかったことにあるのではないだろうか。香港沖にある謎の富豪ハンの”島”で行われる格闘技トーナメントが舞台という設定。
この素晴らしい”閉じた”舞台設定により、あくまでカンフーアクションを楽しみに来た観客を満足させ、さらには、何の先入観もなかった観客を凄まじく”驚愕”させたに違いない。

おそらくブルース・リーの才能を目の当たりにしたハリウッドの映画人は、この作品を皮切りに映画の”新しいジャンル”を開拓できる筈との確信を持ったのではないだろうか。ゆえに”既存のイメージ”を排除する舞台設定を考え抜いたのだろう。

そして、悪役(=”ハン”)のキャラ設定の”深さ”や”魅力”という点では、ブルース・リー作品のなかでは一番かと。あの何を考えているか分からない不敵な笑みと残虐さ。そして世界中の武具や処刑器具のコレクションが趣味という気持ち悪さは、レクター博士を連想させなくもない(笑)。永年にわたり本作が(そのジャンルに関わらず)名作と称される所以は、この悪役の存在感にもあるのではないだろうか。
ゆえに、エンドロールの背景画像は、その彼の”武具 兼 義手”なのだ(笑)。