ちぇり

MEN 同じ顔の男たちのちぇりのネタバレレビュー・内容・結末

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

血がたくさん出たりナイフで切ったり刺したりというグロテスクさはもちろんのこと、薄暗いトンネルの向こうに誰か人がいるとか昼間に家の庭に不審者が堂々と入ってきてこちらを見ているというような不気味な怖さも満載だった。明るいからこそ怖い、みたいなのはミッドサマーに似ているかも。示唆的な内容が多く、知識がない人からしたらちんぷんかんぷんな映画だろうが、ある程度知っている人からすればかなり分かりやすくメッセージが込められている。フェミニズムに寄った映画で、分かりにくいようで意外と直接的な表現も多い。細かいネタバレや考察については別途ネタバレサイトなどを参考にしてもらえば分かりやすいと思うが、映画の終盤にハーパーと司祭が風呂場で話すシーンで、司祭が「ユリシーズ」について言及している点などからも監督の思想が読み取れる。最後の街の男たちの口や腹から次々と子どもが産まれるシーンも、一見すれば気持ちの悪いグロテスクなシーンなだけであるが、出産の痛みやその生々しさを出産の出来ない男にやらせるという部分に意味が込められている。
イギリスの田舎の保守的な街で、男尊女卑的な考えが社会通念として当たり前に浸透している男たちからの理不尽な態度や言葉。メンヘラ夫が死んだのは女である私が下手に出なかったせい。不審者が庭に侵入するという立派な事件に巻き込まれたのに、お楽しみでしたか?などというセクハラ発言を受ける。夜道を歩くという男なら何も考えずに行うことを、女性である私はいつ襲われるか分からないという不安や恐怖を抱えながら歩かなければ行けない。女性であると言うだけで、様々な理不尽を強いられ、抑圧される。そんな静かな怒りとそれに対する狂気にも近い復讐の気持ちを感じた。でも街の男たちの性格を見れば、ざまぁみろとでも言いたくなるような感じ。痛々しいシーンも多かったけれど、主人公のハーパーが街の男たちに気丈に対応しているシーンは何だかスッキリした。
最後助けに来た友人が見た壊れた車や血痕から、昨晩の出来事がどこまでが現実でどこからが彼女の妄想なのかはハッキリしなかったためその部分が鑑賞後も気になった。
ちぇり

ちぇり