note

MEN 同じ顔の男たちのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

夫の死を目撃してしまったハーパーは、心の傷を癒すためイギリスの田舎町へやって来る。彼女は豪華なカントリーハウスの管理人ジェフリーと出会うが、町に出かけると少年や牧師、警官に至るまで出会う男すべてがジェフリーと全く同じ顔だった…。

旅先で出会う男はみんな同じ顔。
これ笑っていいのか?と戸惑っていると、じわじわと気持ち悪くなっていって、最後はグロい。
言いたいことは恐らく「男ってヤツはみんな傲慢な上に甘ったれ」だろう。
SFの秀作「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランドが監督・脚本を手がけたサスペンススリラーの佳作である。

冒頭の夫の死に様はショッキングだ。
スローモーションでアパートの窓の外を落下する夫と目が合う妻のハーパー。
完全にトラウマの光景だ。
忘れようとしても無理な話だが、彼女の人生は続く。
傷心旅行で訪れた田舎の風景が美しく、ひと時の間は癒されるのだが、不穏な影が彼女に忍びよってくる。

散歩で見た廃屋に潜む全裸の男が宿までついてくる。
警察に通報して逮捕してもらうと、その警官も全裸男と同じ顔。
宿の管理人ジェフリーも同じ顔だし、散歩に出れば教会で出会う少年も神父も同じ顔。
町のパブに行けばバーテンも客も同じ顔だ。
そしてハーパーに対して侮辱したり威圧したり、無視したりと彼女の言い分や要望を否定する。
その都度、夫の死とその原因となった夫婦喧嘩がフラッシュバックする。
離婚を切り出したハーパーに逆上して殴った上、一生罪悪感を背負わせるため「死んでやる!」と逆ギレした結果だった。

そこで分かるのは、きっと本作のテーマは「男ってヤツはみんな傲慢な上に甘ったれ」だろうということ。
田舎町の人間みんなが同じ顔なのは、「男なんて、どいつもこいつもみんな同じようなモノ」という分かりやすい視覚化だとしか思えない。
昔、フェデリコ・フェリーニ監督の映画では「全ての女は女神である」と良く女性を賛美していたものだが、本作は全くその逆である。
幼稚で傲慢で甘ったれた男性への嫌悪だ。
いわゆる「ミソジニー」というやつである。

テーマが分かると終盤はテンポアップ。
同じ顔の男たちに襲われたハーパーは屋敷に入りドアを閉める。
全裸男はドアの郵便受けからのぞき込み、左手を差し込んできましたがハーパーは男はその手をつかみ、反射的に持っていた包丁を腕に突き刺す。
男は手をドアから抜こうとするが包丁が引っかかって抜けない。
仕方なくジワジワと手を裂きながらゆっくりと引き抜いていき、ドアは血だらけに。
全裸男は去ったが、少年、神父、ジェフリーと次々と現れる。
全員が同じ手の傷を負っており、ハーパーを襲おうとする。
全裸男がたんぽぽの綿毛を吹き飛ばし、ハーパーに飲ませるのは受精、禁断の実であるリンゴが木から全て落ちるのは、そこではもう子どもが生まれないメタファー。
とにかくハーパーの身体が欲しいイメージの連続。
だが、ハーパーは得体の知れない恐怖に震えるのではなく嫌気が差しているように見える。
ラストは登場する男たちが次々と出産を始める。
男の腹が膨れ、陰部からまた男が産まれてくる様はまるでグロいマトリョーシカ。
「何度生まれ変わっても君を愛してる」という言葉を極端に映像化するとこうなるのか?
もう自分で自分を慰めているオ●ニーに見えてしまう。
最後に産まれてきたのは、なんと死んだはずのハーパーの夫。
しつこいグロさの上に、逆ギレ男の再登場。
なんてしつこい男だろう。
「死が二人を分つまで」の結婚の宣誓すら破るしつこさだ。
「一体どうして欲しいの?」とのハーパーの問いに夫は一言「愛して欲しい」と甘える。
「もう、エエわ…」とは言わないが、ハーパーがプイッと横を向いた瞬間に「男たち」とタイトルが出てエンドロールだ。

その最中には劇中ハーパーと電話で話していた女友達が、ハーパーが心配になって屋敷に迎えにくる。
その女友達のお腹は大きく、妊娠中だったと分かる。
いかに多くの女性が男のワガママの犠牲になっているか…と思わせる。

ダニエル・クレイグ主演の「007」シリーズでビル・タナー役を務めたロリー・キニアが、同じ顔をした不気味な男たちを、知的で控えめで真面目なイメージを払拭するような怪演を見せる。
次にオファーがくるのか?と余計な心配するほど、まぁ気持ち悪い。

男の傲慢さと身勝手さを描いた作品。
カルト宗教的なイメージと不条理なホラーをミックスさせて難解な作風に見せてはいるが、結局はさほど意味がない。
知ったところで結局のところ記憶に残るのは、男の執着と性欲はとても「気持ち悪い」ということだ。

本作の脚本も兼ねたアレックス・ガーランド監督は男性だが、男を憎む女性の味方のような男性の捉え方。
もしかして監督は性同一性障害か?LBGTQの方か?
そうでなければ、こうなってはいけないという世の男性への警告か?
何のカタルシスも無いのが最大の難点だが、男性をここまで気持ち悪く描いた作品は初めてだ。
note

note