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非常宣言のbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

非常宣言(2020年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

なかなかスリリングで面白かった。飛行機という閉鎖空間で発生したバイオテロというテーマで、感染者かどうかで揉めてエリア分けをする乗客の愚かさや、機長が感染したことで飛行機が墜落しそうになる恐怖などを盛り込んだ脚本が上手い。展開がスピーディーなので長尺だが観ていて飽きないし、先が気になる。犯人は最初に明かすし割と早く退場してしまうので、フォーカスが犯人探しにならないのも良くて、テロに巻き込まれた人たちやその家族の心情に寄り添うような作りになっている。

ワクチンが効くかどうかわからないから着陸させられない、という事態に、機内の妻を助けるため自らウイルスを打つ刑事(ソン・ガンホ)があまりに格好良かった(実際のところそれだけではワクチンの有効性は言えないのだがまぁそれはさておき)。また元パイロット(イ・ビョンホン)の、「お前には申し訳なかったが、いくら思い返してもあのときは俺の決断が正しかった」的な台詞にはグッとくるものがあった。それに対する「僕もそう思います」の返しも。あの状況で乗客のために尽くし続けるチーフCAさんも素敵だった。

自分が助かりたいがために感染の疑いがある者を隔離に追いやり続けた男が、着陸を防ぐための市民のデモを見て「ここで死ねってことか?皆が助かるべきなのに勝手なことを」と呟き「おじさんもそうでした」と返される流れは強烈。全員が感染を悟り、着陸を諦めるシーンの悲しさ。ワクチンの有効性が告げられ、着陸できることになったときの喜び。とにかく一連の展開が素晴らしかった。

ただスピーディーなのはいいが、何もかもがあまりに速く進みすぎていて凄い違和感。特に後半。日本政府も韓国政府もソウル市民も、決断と行動があまりに迅速すぎる。ウイルスもワクチンも効果が速すぎ。そんなわけあるかい、とツッコミ続けていたら疲れてしまった。まぁある種の寓話だと思って楽しむことは可能。確かに緊張感はものすごかったし。

しかし非常宣言してもあんなにちっとも着陸させてもらえないなら、何の為の非常宣言なんだろうな。
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