Yukenz

ザリガニの鳴くところのYukenzのネタバレレビュー・内容・結末

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

父親の暴力が原因で家族が散り散りになりひとり取り残されてしまった不幸な少女カイア。

冒頭で早速事件が発生するので、サスペンス色が強いのかと思ったがそこまででもなく、町から離れてひとり湿地で生きる少女の成長過程の振り返りをメインに、事件の裁判が並行して進行する。

湿地の広大で美しい風景とそこに生息するものたちの生態を映し出しているのも作品の魅力。

困っている人に手を差し伸べるのは、すなわち自分への行為であるとの教えを実践する黒人夫婦。街で小さな食糧品店を営むなか黒人である事できっと差別的行為を受けていただろうに、カイアをずっと気に掛け世話している、神の使いのような方たち。

自分たちと異質なる者として根拠なく罪をカイアに推し着せようとする町の検察に対し、公平な裁きを求めるべく一度引退した弁護士業に復帰するミルトン。

学校に通えなかったカイアに読み書きを教える心優しい青年テイト。幼少期からカイアが気になっていたが、若さ故か結果的に純真なカイアの思いを踏み躙ってしまった事を後悔しながら再び故郷に舞い戻る。

そして問題児チェース。彼のカイアへの思いはある意味本心であったと思うが、相手を思いやるというより自己の精神安定のために無垢なカイアに逃げ場を求めただけのように思える。自分の思いが満たされないと知ると暴力に訴えるクズな男。

謎が解き明かされないまま迎えたラストシーンへの展開に驚愕…でもその真相はやはり闇の中。この締め方によって色々と考えさせられ、また見返したくなる。上手いなぁ。
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