もう「撮影」が主役と言っていいようなヴィジュアル映画。薫ってくるような色彩と空気感（煙草の煙！）、メランコリックで無国籍な音楽もうっとり。たいした展開があるわけでもない単調な話だが、画面に釘付け。
もちろん、その、目を捉えて離さない大きな要因は、トニー・レオンとマギー・チャンの存在感。美しさ。周りの60年代然としたエネルギッシュで野暮ったい香港の人・街からわざとらしいくらい浮き立っている。そういう意味で同じ階層である二人の配偶者を見せない演出は上手い。
が、しかし、まあこれは好みの問題だが、それ以上こっちの感情に刺さってくるものはなかったかなあ。すべてが作り手の手中にある完結した作品で、そこを突き出たり、溢れ落ちたりのパッションがなかったかなあ。
